( 3 )初期作動確認機能
イグニション・スイッチを ON にしてから最初に車速が約 6km / h 以上になると,ブレーキ・アクチュエータ内の各ソレノイド・バルブ及びモータを順次作動させ電気的な.点検を行う。なお,ブレーキ・ペダルを踏んでいると初期作動確認は行われず,ペダルを離した時点で作動確認を開始する。
( 4 )フェイルセーフ機能
スキッド ECU 本体,スキッド ECU の信号系統,ブレーキ・アクチュエータに異常が発生した場合は, ABS 及び VSCS ウォーニング・ランプを点灯させ, ABS ,ブレーキ・アシスト・システム,トラクション・コントロール.システム及び VSCS の作動を禁止する。
( 5 ) ABS の作動
ABS の油圧系統は,右前輪用,左前輪用,右後輪用,左後輪用の 4 系統あるが,作動については 4 系統同じであるため右前輪の油圧系統を例に説明する。
(イ)増圧作動時(通常制動時)
図は増圧作動時(通常制動時)を示したもので,スキッド ECU から制御信号が出力されないので,保持ソレノイド・バルブは OFF 状態のためポートは開いている。また,減圧ソレノイド・バルブは OFF 状態のためポートは閉じられている。このためブレーキ・ペダルを踏み込んでマスタ・シリンダの油圧が上昇するとブレーキ油圧は,マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブのポートを通り保持ソレノイド・バルブのポートを通ることでホイール・シリンダに油圧を掛ける。また,ポンプ側の経路は,チェック・バルブ ① で閉じられているので,マスタ・シリンダからのブレーキ液は作用しない。
各ソレノイド・バルブの開閉の状態
各ソレノイド・バルブ |
状態 |
プリチャージ・ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ |
OFF(開) |
吸入ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
保持ソレノイド・バルブ |
OFF(開) |
減圧ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
ブレーキ・ペダルを離すとホイール・シリンダのブレーキ液は,保持ソレノイド・バルブのポートとチェック・バルブ ② (スプリングのばね力と油圧とのバランスで開く。)の両方を通りマスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブのポートを経由しマスタ・シリンダへ戻る。
なお, ABS の作動に必要なソレノイド・バルブは,減圧及び保持ソレノイド・バルブになる。また,他のソレノイド・バルブは表 のようにすべて OFF 状態となっている。
(口)減圧作動時
図 は減圧作動時を示したもので,制動作動により車輪がロックしそうになると,スキッド ECU からの制御信号により,保持ソレノイド・バルブは ON 状態になるためポートは閉じられる。また,減圧ソレノイド.バルブも ON 状態になるため,ポートは開かれる。このため,ホイール・シリンダに掛かっていた油圧は,減圧ソレノイド・バルブのポートを経由してリザーバに送られる。
各ソレノイド・バルブの開閉の状態
各ソレノイド・バルブ |
状態 |
プリチャージ・ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ |
OFF(開) |
吸入ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
保持ソレノイド・バルブ |
ON(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ |
ON(開) |
また,同時にスキッド ECU は,ポンプに対して作動信号を出力するため,リザーバにたまったブレーキ液は,ポンプによってくみ出されマスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブのポートを経由してマスタ・シリンダに戻される。このようにしてホイール・シリンダの油圧を減圧している。
(ハ)保持作動時
図 は保持作動時を示したもので,ホイール・シリンダの油圧が規定の制御油圧まで減圧又は,増圧されると,スキッド ECU からの制御信号により,保持ソレノイド・バルブは ON 状態になるためポートは閉じられる。このとき,減圧ソレノイド・バルブは OFF 状態でポートは閉じたままになるため,マスタ・シリンダからホイール・シリンダへの油路が断たれ,そのときの油圧が保持される。
各ソレノイド・バルブの開閉の状態
各ソレノイド・バルブ |
状態 |
プリチャージ・ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ |
OFF(開) |
吸入ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |
保持ソレノイド・バルブ |
ON(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ |
OFF(閉) |