(ロ)アンダステア抑制作動
( a )増圧作動時
図 は増圧作動時を示したもので,スキッド ECU からの制御信号により,真空式制動倍力装置に取り付けられている
プリチャージ・ソレノイド・バルブが ON (開),
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON (閉),
吸入ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON (開),保持ソレノイド・バルブ 2 が ON (閉)の状態になる。
このとき,保持ソレノイド・バルブ1, 3 , 4 の制御信号は OFF (開)のためポートは開いた状態である。また,減圧ソレノイド・バルブ 1 , 2 , 3 , 4 の制御信号も OFF (閉)のためポートは閉じた状態である。真空式制動力倍力装置に取り付けられているプリチャージ・ソレノイド・バルプが ON (開)したことで,補助変圧室に大気が導入され補助変圧室と定圧室との差圧による力が,サブ・プレートからプシュ・ロッドに伝達されマスタ・シリンダを介して油圧を発生させる。ブレーキ液は,吸入ソレノイド・バルブ 1 , 2 のポートを通りポンプに送られる。ポンプによってくみ出されたブレーキ液は,保持ソレノイド・バルブ 1 , 3 , 4 のポートを通りフロント左右及びリヤ右ホイール・シリンダに油圧を掛ける。フロント左右及びリヤ右にブレーキが掛かったことで右旋回時のアンダステアを抑制している。
また,マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルプ 1 , 2 は, ON (閉)しているが,運転者の意志でブレーキ・ペダルを踏んだときブレーキ液は,チェック・バルブを通り増圧できるようになっている。
( b )減圧作動時
図 は減圧作動時を示したもので,スキッド ECU からの制御信号により,真空式制動倍力装置に取り付けられている
プリチャージ・ソレノイド・バルブが ON (開),
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON (閉),
保持ソレノイド・バルブ 1 , 2 , 3 , 4 が ON (閉),
減圧ソレノイド・バルブ 1 , 3 , 4 は ON (開)の状態になる。
このとき,吸入ソレノイド.バルブ 1 , 2 及び減圧ソレノイド・バルブ 2 の制御信号は OFF (閉)のためポートは閉じた状態である。このため,フロント左右及びリヤ右ホイール・シリンダに掛かっていた油圧が減圧ソレノイド・バルブ 1 , 3 , 4 の各ポートを通りリザーバへ逃げ減圧される。
( c )保持作動時
図 は保持作動時を示したもので,スキッド ECU からの制御信号により,真空式制動倍力装置に取り付けられている
プリチャージ・ソレノイド・バルブが ON (開),
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON (閉),
保持ソレノイド・バルブ 1 , 2 , 3 , 4 が ON (閉)状態になる。
このとき,吸入ソレノイド・バルブ 1 , 2 及び減圧ソレノイド・バルブ 1 , 2 , 3 , 4 の制御信号は OFF (閉)のためポートは閉じた状態である。このため,フロント左右及びリヤ右ホイール・シリンダには,そのときの油圧が保持される。
VSCSアンダステア抑制作動(右旋回時)
|
加圧時 |
減圧時 |
保持時 |
プリチャージ・ソレノイド・バルブ |
ON(開) |
ON(開) |
ON(開) |
マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 |
ON(閉) |
ON(閉) |
ON(閉) |
マスタ・シリンダ・ソレノイド・バルブ 2 |
ON(閉) |
ON(閉) |
ON(閉) |
吸入ソレノイド・バルブ1 |
ON(開) |
OFF(閉) |
OFF(閉) |
吸入ソレノイド・バルブ2 |
ON(開) |
OFF(閉) |
OFF(閉) |
保持ソレノイド・バルブ1 右前 |
OFF(開) |
ON(閉) |
ON(閉) |
保持ソレノイド・バルブ2 左後 |
ON(閉) |
ON(閉) |
ON(閉) |
保持ソレノイド・バルブ3 右後 |
OFF(開) |
ON(閉) |
ON(閉) |
保持ソレノイド・バルブ4 左前 |
OFF(開) |
ON(閉) |
ON(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ1 右前 |
OFF(閉) |
ON(開) |
OFF(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ2 左後 |
OFF(閉) |
OFF(閉) |
OFF(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ3 右後 |
OFF(閉) |
ON(開) |
OFF(閉) |
減圧ソレノイド・バルブ4 左前 |
OFF(閉) |
ON(開) |
OFF(閉) |
( 4 )システム協調制御
VSCS の制御を効率的に発揮させるために, VSCS 作動時は他の制御システムとの協調制御を行っている。
(イ)電子式燃料噴射制御と電子制御式オートマティック・トランスミッション制御
アクセル・ペダル踏み込まない状態でダウン・シフト時の駆動トルク変化を緩和して,強いエンジン・ブレーキ力とVSCSのプレーキカ制御が干渉しないようにしている。
(ロ)ABS 制御とトラクション・コント口ール制御
VSCS 制御を優先にする。
3 点検・整備
1 ) VSCS 装着車の注意事項
( 1 ) VSCS が正常に作動しない場合
① 指定以外のサイズ,指定以外の空気圧,異なるメーカー,異なる銘柄,異なるトレッド・パターンのタイヤ装着したとき。
② 摩耗差の著しいタイヤを混ぜて装着したとき。
③ タイヤ・チェーン装着のとき。
④ 応急用スペア・タイヤを使用したとき。
( 2 )ドラム・テスタ使用する場合
① VSCS の作動を停止させるために,必ずイグニション・スイッチを OFF にしてから車載故障診断装置コネクタの規定端子を短絡してからエンジンを始動させ測定する。
② 負荷設定機構があるテスタは使用できない。
③ 急発進,急加速は行わない。
④ 最高速度は, 60km / h 以下で行う。(フリー・ローラ使用時は 50km/h 以下)
⑤ 運転時間は 1 分以内にする。