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電子制御式スロットル装置を用いた筒内噴射式ガソリン・エンジンに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)インジェクタには,高電圧大電流に対応した低抵抗コイルが内蔵されており,作動確認などでバッテリ電圧を直接印加するとコイルが溶損するため,インジェクタにバッテリ電圧を直接掛けてはならない。
(2)アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系統になっており,また,異常を検出したときは,退避走行が可能となる程度に吸入空気の流量を制御している。
(3)リーンNOX触媒のうち選択還元型のものは,リーン(希薄)燃焼時には,NOX吸蔵物質にNOXを蓄えておき,理論空燃比運転時に一時的に空燃比を濃くし,排出ガス中のCO,HC等を利用してNOXを還元する。
(4)低速トルク向上制御では,吸入行程と圧縮行程の2回で燃料を噴射して燃焼(1回目の噴射は自己着火しない程度のリーンな混合で,2回目の噴射と合わせた空燃比は15~23程度)させている。
解く
(1)インジェクタには,高電圧大電流に対応した低抵抗コイルが内蔵されており,作動確認などでバッテリ電圧を直接印加するとコイルが溶損するため,インジェクタにバッテリ電圧を直接掛けてはならない。
適切
インジェクタ
高電圧大電流に対応した低抵抗コイルを内蔵しており,作動確認などでバッテリ電圧を直接印加するとコイルが溶損するため,絶対にバッテリ電圧を直接掛けてはならない。
燃料配管も含め,再使用が禁止されている場合があるので注意する必要がある。
(2)アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系統になっており,また,異常を検出したときは,退避走行が可能となる程度に吸入空気の流量を制御している。
適切
電子制御式ス口ットル装置
筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,エンジン負荷に応じて燃焼方式を切り替えている。そのため,同一吸入空気量で燃焼方式を切り替えると,発生トルクに差が生じてスムーズな切り替えができない。また,従来のアクセル・ペダル連動式のスロットル・バルブでは,アクセル開度とバルブ開度の関係が固定されているため,燃焼方式切り替え時には,大容量のバイパス回路が必要となる。
そこで,多くの筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,アクセル・ペダルの踏み込み量に応じて,適切なエンジン・トルクを得られるように,図 のような電子制御式スロットル装置を採用している。
これは,アクセル・ペダルの動きをセンサで検出し,その出力をべースにエンジン・エレクトロニック・コントロール・ユニット(以下,エンジン ECU という。)がスロットル・エレクトロニック・コントロール・ユニット(以下,スロットル ECU という。) を介してモータを駆動し,スロットル・バルブを最適な開度となるように制御するもので,エンジン負荷に応じた各燃焼方式で必要とされる空気量を,運転者に違和感を与えることなく供給するようになっている。
また,万一の故障時にも対応できるように,アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系にすると共に,異常を検出したときには,退避走行が可能となる程度に吸入空気の流量を制御している。
(3)リーンNOX触媒のうち選択還元型のものは,リーン(希薄)燃焼時には,NOX吸蔵物質にNOXを蓄えておき,理論空燃比運転時に一時的に空燃比を濃くし,排出ガス中のCO,HC等を利用してNOXを還元する。
不適切
トラップ型
リーンNOx触媒の種類と特徴
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選択還元型 |
トラップ型 |
原理 |
リーン(希薄)燃焼時に活性層で図3-35のようにHCを使用してNOxを還元する |
リーン(希薄)燃焼時には、図3-36のようにNOxを吸蔵物質に蓄えておき、理論空燃比運転時に濃くし、排出ガス中のCO、HC等を利用してNOxを還元する。 |
長所 |
定常的な浄化が可能。ガソリン中に硫黄分が含まれていても浄化性能への影響は少ない。 |
NOxの浄化率が高い。 |
短所 |
還元にHCを使用するため、上流に三元触媒を設置できない。このため、三元触媒の活性化に時間が必要。 |
ガソリン中に硫黄分が含まれていると急速に劣化する。NOx還元時は空燃比を濃くする必要あり。 |
短所を補う制御 |
触媒早期活性化制御により、燃焼(膨張)工程での燃料噴射を行なうと共に排気滞留時間が長いのマニホールドを採用することで、短時間での三元触媒活性化を行なう。 |
電子制御スロットル・バルブにより、吸入空気量を絞って一時的に空燃比を濃くし、還元時の燃料消費を最小化する。 |
(4)低速トルク向上制御では,吸入行程と圧縮行程の2回で燃料を噴射して燃焼(1回目の噴射は自己着火しない程度のリーンな混合で,2回目の噴射と合わせた空燃比は15~23程度)させている。
適切
その他の特殊な燃料噴射制御
筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,混合気形成の自由度が高いため,次のような燃料噴射制御も目的に応じて採用されている。
低速トルク向上制御
低速トルクを向上させるために,図左のように燃料を吸入行程と圧縮行程で2回に分けて噴射して燃焼(空燃比:合計で15~23程度)させている。
1回目の吸入行程での噴射では,自己着火しない程度のリーンな混合となるようにし,次に圧縮行程で残りの燃料を噴射する。
圧縮行程中に噴射された燃料は,自己着火(ノッキング)が発生する前に火炎伝播により燃焼するため,耐ノッキング性が向上し,図右のように点火時期の進角が可能となり,また低速トルクの大幅な向上が行われている。
よって答えは(3)