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平成19年3月実施1級小型問題29:トラクション・コントロール(FF車用)

29

ラクション・コントロール(FF車用)に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。

 

(1)トラクション・コントロール・オフ・スイッチは,ぬかるみからの脱出時などに使用するが,スピード・メータ・テスタ等の2輪テスタで測定するときは使用しない。

 

(2)プリチャージ機能付き真空式制動倍力装置は,トラクション・コントロール作動時には,スキッドECUからの制御信号によりプリチャージ・ソレノイド・バルブが作動して,補助変圧室が真空となる。

 

(3)トラクション・コントロールは,減速時のブレーキ液圧制御やエンジン出力制御により駆動輪のスリップを最適な範囲に制御する。

 

(4)ブレーキ油圧制御中の増圧作動時にマスタ・シリンダから送り出されたブレーキ液は,吸入ソレノイド・バルブのポート,ポンプ,保持ソレノイド・バルブのポートを通ってホイール・シリンダに送られる。

 

解く

(1)トラクション・コントロール・オフ・スイッチは,ぬかるみからの脱出時などに使用するが,スピード・メータ・テスタ等の2輪テスタで測定するときは使用しない。

不適切

ラクション・コントロール・オフ・スイッチ

ラクション・コントロール・オフ・スイッチは,図 のような場所に取り付けられており,トラクション・コントロール作動可能状態時にスイッチを押すと OFF になる。また, OFF の状態でイグニション・スイッチを OFF から ON にすると自動的にトラクション・コントロール作動可能状態に切り替わるようになっている。このスイッチは,ぬかるみ,新雪などからの脱出時に使用されると共に,スピードメータ・テスタ,ブレーキ・テスタ及びシャシ・ダイナモ・テスタなどの 2 輪テスタで測定するときにも使用される。

(2)プリチャージ機能付き真空式制動倍力装置は,トラクション・コントロール作動時には,スキッドECUからの制御信号によりプリチャージ・ソレノイド・バルブが作動して,補助変圧室が真空となる。

不適切

プリチャージ機能付き真空式制動倍力装置

プリチャージ機能付き真空式制動倍力装置は,図 のように通常の真空式制動倍力装置にトラクション・コントロール及び VSCS 作動時のプリチャージ用としてプリチャージ・ソレノイド・バルブ,ブーツ,サブ・プレート及びサブ・ダイヤフラムを追加した構造となっており,サブ・ダイヤフラムとサブ・プレートにより,通常の真空式制動倍力装置の変圧室と定圧室の間に補助変圧室が形成されている。この補助変圧室には,大気が導入される通路(ブーツ)が取り付けられ,プリチャージ・ソレノイド・バルブにより大気の導入又は,遮断が行われる。トラクション・コントロール及び VSCS 作動時は,スキッド ECU からの制御信号によりプリチャージ・ソレノイド・バルブが作動し,補助変圧室に大気が導入され補助変圧室と定圧室との差圧による力がサブ・プレートからプシュ・ロッドに伝達されて圧力を発生する。この圧力は,ブレーキ・アクチュエータのポンプ入り口に導入され,ポンプの吸入系の圧力を補助している。

(3)トラクション・コントロールは,減速時のブレーキ液圧制御やエンジン出力制御により駆動輪のスリップを最適な範囲に制御する。

不適切

ラクション・コンロ―ル

ラクション・コントロールは,エンジンの駆動力が伝達されている車輪のスリップを防止する装置である。

一般に,濡れたアスファルト路面や氷雪路など摩擦係数が低い路面などで発進及び加速時にスロットルを開け過ぎると,過大なトルクにより駆動輪がスリップして駆動力が低下し横抗力が失われる。このため,車両は加速不良となりフロント・エンジン・フロント・ドライブ( FF )式の車両では,前輪の横抗力が失われるため操舵ができず曲がらなくなる。また,フロント・エンジン・リヤ・ドライブ( FR )式では,後輸の横抗力が発生しないためオーバステア状態となる場合がある。トラクション・コントロールは,図 のように駆動輪のブレーキ制御及びフューエル・カットによるエンジン出力制御により駆動輪のスリップを

図 のAの範囲に抑える制御をすることにより,

図のように路面状況に応じた駆動力を確保し車両の発進加速性能,直進性及び旋回安定性を確保している。

(4)ブレーキ油圧制御中の増圧作動時にマスタ・シリンダから送り出されたブレーキ液は,吸入ソレノイド・バルブのポート,ポンプ,保持ソレノイド・バルブのポートを通ってホイール・シリンダに送られる。

適切

増圧作動時

図  は増圧作動時を示したもので,スキッド ECU からの制御信号により真空式制動倍力装置に取り付けられているプリチャージ・ソレノイド・バルブが ON (開),マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON (閉),吸入ソレノイド・バルブ 1 , 2 が ON で(開),保持ソレノイド・バルブ 2 , 3 が ON (閉)の状態になる。このとき,保持ソレノイド・バルブ 1 , 4 の制御信号は OFF のためポートは開いた状態である。また,減圧ソレノイド・バルブ 1 , 2 , 3 , 4 の制御信号も OFF のためポートは閉じた状態である。真空式制動倍力装置に取り付けられているプリチャージ・ソレノイド・バルブが ON (開)したことで,補助変圧室に大気が導入され補助変圧室と定圧室との差圧による力がサブ・プレートからプシュ・ロッドに伝達されマスタ・シリンダを介して油圧を発生させる。ブレーキ液は,吸入ソレノイド・バルブ 1 , 2 の各ポートを通りポンプに送られる。ポンプによってくみ出されたブレーキ液は,保持ソレノイド・バルブ 1 , 4 の各ポートを通り駆動輪のフロント・ホイール・シリンダに油圧を掛ける。なお,マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1 , 2 は,各チェック・バルブで調圧をしている。

ラクション・コントロール

 

非作動時

増圧時

減圧時

保持時

プリチャージ・ソレノイド・バルブ

OFF(閉)

ON(開)

ON(開)

ON(開)

マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 1

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

ON(閉)

マスタ・シリンダ・カット・ソレノイド・バルブ 2

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

ON(閉)

吸入ソレノイド・バルブ1

OFF(閉)

ON(開)

OFF(閉)

OFF(閉)

吸入ソレノイド・バルブ2

OFF(閉)

ON(開)

OFF(閉)

OFF(閉)

保持ソレノイド・バルブ1 右前

OFF(開)

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

保持ソレノイド・バルブ2 左後

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

ON(閉)

保持ソレノイド・バルブ3 右後

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

ON(閉)

保持ソレノイド・バルブ4 左前

OFF(開)

OFF(開)

ON(閉)

ON(閉)

減圧ソレノイド・バルブ1 右前

OFF(閉)

OFF(閉)

ON(開)

OFF(閉)

減圧ソレノイド・バルブ2 左後

OFF(閉)

OFF(閉)

OFF(閉)

OFF(閉)

減圧ソレノイド・バルブ3 右後

OFF(閉)

OFF(閉)

OFF(閉)

OFF(閉)

減圧ソレノイド・バルブ4 左前

OFF(閉)

OFF(閉)

ON(開)

OFF(閉)

よって答えは4