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電子制御式ATのフェイルセーフ機能に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)車速センサの1系統とスロットル・ポジション・センサの両方の信号が入力しなくなった場合でも走行可能なように制御する。 |
(2)一つのシフト・ソレノイド・バルブに異常が発生すると変速ができなくなるので,安全を考慮して走行不能とする。 |
(3)AT・ECUにインヒビタ・スイッチの信号が一つも入力されない場合は無信号時とみなし,直前の信号を入力信号として走行できるように制御する。 |
(4)ライン・プレッシャ・ソレノイドに異常が発生すると,ソレノイドをOFFにしてライン・プレッシャを最大にする。 |
解く
(1)車速センサの1系統とスロットル・ポジション・センサの両方の信号が入力しなくなった場合でも走行可能なように制御する。 |
(2)一つのシフト・ソレノイド・バルブに異常が発生すると変速ができなくなるので,安全を考慮して走行不能とする。 不適切 |
(3)AT・ECUにインヒビタ・スイッチの信号が一つも入力されない場合は無信号時とみなし,直前の信号を入力信号として走行できるように制御する。 |
(4)ライン・プレッシャ・ソレノイドに異常が発生すると,ソレノイドをOFFにしてライン・プレッシャを最大にする。 |
よって答えは(2)
フェイルセーフ項目
( イ ) 車速センサ
車速センサは,車速センサ1と車速センサ2の2系統から入力している。そのどちらか一系統に異常が発生しても,走行が可能である。また,走行中に2系統とも,異常が発生した場合は,D,2レンジでは3速固定,1レンジでは2速固定とし走行できる。
( ロ ) スロットル・ポジション・センサ
スロットル・ポジション・センサに異常が発生すると,スロットル・バルブ・スイッチのアイドル接点とフル接点のON・OFFにより表1-3のようにスロットル開度を3段階で検知し,走行できるよう制御している。変速は1~4速(オーバドライブ)まで可能だが,変速点は高くなる。また,アイドリング時以外はライン・プレッシャが最高圧となるので,変速ショックも大きくなる。
( ハ ) シフト・ポジション・センサ
シフト・ポジション・センサの出力は,ATの油圧回路がどのレンジを選択しているかを,ECUに知らせる役目であるが,同時に別のレンジ信号が入ったり,信号が欠落したりすると,ECUは,変速信号をどう出してよいか分からなくなるので,そのとき異常を検知すると共に,次の取り決めで変速を行うようにしている。
ⅰ)複数信号の入力時
複数の信号がECUに入力した場合は,電気的には,D>2>1の優先順の入力信号となり,4速(オーバドライブ)への変速を禁止する。ECUは表1-4のように制御する。
ⅱ)無信号時
ECUにセレクト位置信号が入力されない場合,直前の信号を入力信号とみなし,走行できるよう制御する。例えば,2レンジ信号が入力しなかった場合は,Dレンジから2レンジにシフトしたときは,Dレンジ信号を入力とする。また,1レンジから2レンジにシフトしたときは,1レンジ信号を入力信号とする。実際の変速はマニュアル・バルブとの関係から表1-5のようになる。
( ニ ) シフト・ソレノイド・バルブ A,B
走行中にシフト・ソレノイド・バルブA,Bのどちらか一方に異常が発生すると,ECUは,もう一方のソレノイド・バルブの出力を止め,3速状態で走行できるよう制御する。この制御は,Dレンジと2レンジでは3速固定だが,1レンジでは2速固定となる。また,シフト・ソレノイド・バルブA,B両方に異常が発生した場合でも同様である。
( ホ ) ライン・プレッシャ・ソレノイド・バルブ
ライン・プレッシャ・ソレノイド・バルブに異常が発生すると,ECUは,ソレノイド・バルブをOFFにするため,ライン・プレッシャは最大に制御される。したがって,1~4速(オーバドライブ)まで変速するが,セレクト・ショック(NからD,NからR)及び変速ショック共に大きくなる。
( ヘ ) ロックアップ・ソレノイド・バルブ
ロックアップ・ソレノイド・バルブに異常が発生すると,ECUは,ソレノイド・バルブをOFFにするため,ロックアップを解除(禁止)する。
( ト ) オーバラン・クラッチ・ソレノイド・バルブ
オーバラン・クラッチ・ソレノイド・バルブに異常が発生すると,ECUは,ソレノイド・バルブをOFFにするため,オーバラン・クラッチを締結して,減速時に,常にエンジン・ブレーキが効くようになる。(ただし,D1,21は除く)なお,Dレンジ4速域になると(オーバドライブ・スイッチON時),ECUは,ライン・プレッシャを高くして,4速(オーバドライブ)にしている。
フェイルセーフ項目以外
( イ ) 油温センサ
(a )断線時
断線すると,抵抗は無限大(∞Ω)となり,ECUには,極低温の信号が入力することになる。したがって,極低温時の制御に基づいてライン・プレッシャは常時最大となり,セレクト・ショック,変速ショック共に大きく,4速(オーバドライブ)への変速は禁止となる。
(b )短絡時
短絡の場合は,抵抗が0Ωとなるので,断線時とは逆に極高温の信号が入力されることになる。したがって,高温時は特別な制御はしていないので,通常の走行では影響は出ない。ただし,低温時の制御はできなくなる。