〔NO. 16〕
図に示すインテグラル型油圧式パワー・ステアリング(ロータリ・バルブ式)に関する記述として、不適切なものは次のうちどれか。

(1)ロータは、スリーブにかん合している。
(2)ロータリ・バルブはスリーブとロータで構成されている。
(3)操舵時は、トーション・バーのねじれ角に応じてロータが回転し、油路を切り替える。
(4)ハンドルの操舵力は、ウォーム・シャフト、トーション・バー、スタブ・シャフトの順に伝達される。
解く
(1)ロータは、スリーブにかん合している。
適切
(2)ロータリ・バルブはスリーブとロータで構成されている。
適切
(3)操舵時は、トーション・バーのねじれ角に応じてロータが回転し、油路を切り替える。
適切
(4)ハンドルの操舵力は、ウォーム・シャフト、トーション・バー、スタブ・シャフトの順に伝達される。
不適切
ステアリング・ホイールを右に操舵すると、その操舵力は、スタブ・シャフトを介してトーション・バーからウォーム・シャフトと伝達される
よって答えは(4)
◎油圧式パワー・ステアリング
ここでは、主に大型車に用いられているインテグラル型について説明する。
制御部となるコントロール・バルブにロータリ・バルブを用いたインテグラル型パワー・ステアリングは、図のようにステアリング・ホイールの回転をウォーム・シャフト、パワー・ピストン(ボール・ナット)を介してセクタ・シャフトに伝えるギヤ機構と、油圧をステアリング・ホイールからの入力に応じた操舵方向に制御すると共に、その油圧をパワーシリンダへ送り、パワー・ピストンを作動させて、セクタ・シャフトを回転させる補助動力機構により構成されている。

図はロータリ・バルブの外観及び断面を示したもので、ロータリ・バルブはスリーブとロータで構成され、スリーブには、外周に3箇所のオイルが通るリング状の横溝
と、内周に6箇所の縦溝がある。スリーブにかん合するロータは、外周にスリーブと同じ6箇所の縦溝が切られており、ロータの回転によって生じるロータとスリーブの位置関係の変化により、油路の切り替えやシリンダ室へのパワー・ステアリング・フルード(以下、フルードという。)の流量の制御を行っている。

(イ)直進時
直進状態(操舵なし)のときは、図のように、オイル・ポンプからのフルードは、スリーブのポートからパワー・シリンダのL室及びR室に流入し、余剰なフルードは、スリーブの上段に位置するべアリングの隙間を通ってリザーブ・タンクに戻る。

このとき、スリーブとロータ間の隙間は等しい状態(中立位置)にあるため、パワー・シリンダの両室に作用する油圧は等しく、パワー・ピストンは動かない。
(ロ)操舵時

これにより、R室はオイル・ポンプからの油路が形成され、L室はリザープ・タンクへの油路が形成される。したがって、図のようにフルードがパワー・シリンダのR室へ流れて油圧が上昇し、パワー・ピストンは図の上側へ移動する。一方、L室のフルードは押し出されてリザープ・タンクに戻る。この結果、セクタ・シャフトを介してフロント・ホイールが右に向く。
この作動は、ステアリング・ホイールの操舵が終わって、トーション・バーのねじれ角が小さくなり、ロータとスリープ間の隙間を等しくするためのスリープの追従作動が終わるまで行われる。
なお、左操舵時の作動は、説明した右旋回時の作動の逆となる。