〔NO. 20〕
インテグラル型パワー・ステアリング(ロータリ・バルブ式)に関する記述として、不適切なものは次のうちどれか。
(1)直進時は、スリーブとロータ間の位置関係が中立にあり、パワー・シリンダの両室に作用する油圧は等しい。
(2)操舵時は、トーション・バーのねじれ角に応じてスリーブが回転し、油路を切り替える。
(3)エンジン停止時や故障により操舵時に油圧が発生しない場合は、トーション・バーがねじれ、スタブ・シャフトのストッパが直接ウォーム・シャフトを回転させる。
(4)かじ取り感覚(ステアリング・ホイールにかかる反カ)は、トーション・バーのねじれを反力として利用することで得ている。
解く
(1)直進時は、スリーブとロータ間の位置関係が中立にあり、パワー・シリンダの両室に作用する油圧は等しい。
◎直進時
直進状態(操舵なし)のときは、図のように、オイル・ポンプからのフルードは、スリーブのポートからパワー・シリンダのL室及びR室に流入し、余剰なフルードは、スリーブの上段に位置するべアリングの隙間を通ってリザーブ・タンクに戻る。

このとき、スリーブとロータ間の隙間は等しい状態(中立位置)にあるため、パワー・シリンダの両室に作用する油圧は等しく、パワー・ピストンは動かない。
適切
(2)操舵時は、トーション・バーのねじれ角に応じてスリーブが回転し、油路を切り替える。
◎操舵時
ステアリング・ホイールを右に操舵すると、その操舵力は、スタブ・シャフトを介してトーション・バーからウォーム・シャフトと伝達されるが、路面抵抗がステアリング・ホイールからの操舵カより大きいときは、ウォーム・シャフトが固定された状態になり、トーション・バーのねじれ角に対応して、図のようにロータが回転する。

これにより、R室はオイル・ポンプからの油路が形成され、L室はリザープ・タンクへの油路が形成される。したがって、図のようにフルードがパワー・シリンダのR室へ流れて油圧が上昇し、パワー・ピストンは図の上側へ移動する。一方、L室のフルードは押し出されてリザープ・タンクに戻る。この結果、セクタ・シャフトを介してフロント・ホイールが右に向く。
この作動は、ステアリング・ホイールの操舵が終わって、トーション・バーのねじれ角が小さくなり、ロータとスリープ間の隙間を等しくするためのスリープの追従作動が終わるまで行われる。
なお、左操舵時の作動は、説明した右旋回時の作動の逆となる。
不適切
(3)エンジン停止時や故障により操舵時に油圧が発生しない場合は、トーション・バーがねじれ、スタブ・シャフトのストッパが直接ウォーム・シャフトを回転させる。
◎操舵力の補助がない操舵
エンジン停止時や、故障により油圧が発生しない場合は、ステアリング・ホイールを右又は左に操舵すると、トーション・バーがねじられ、図に示すストッパにより、スタブ・シャフトがウォーム・シャフトに当たり、直接ウォーム・シャフトを回転させ、パワー・ピストンを介してセクタ・シャフトを回転させることが可能となり、かじを取ることができる。

適切
(4)かじ取り感覚(ステアリング・ホイールにかかる反カ)は、トーション・バーのねじれを反力として利用することで得ている。
◎かじ取り感覚
パワー・ステアリングは軽く操舵できるので、ステアリング・ホイールに適度な手応え(反カ)が必要になる。
この手応えの感覚を得るために、パワー・ステアリングでは、トーション・バーのねじれを反力として利用しており、路面抵抗が大きいときには、トーション・バーも大きくねじれて反力が大きくなり、路面抵抗が小さいときには、ねじれ角も小さく、反力も小さく作用する。
適切
よって答えは(2)