再現性の乏しい不具合に対する故障診断を実施する場合に,外的要因を車両停止状態において加えることで行う「再現手法」に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)車室内に雨漏れがある場合,雨水が配線を伝わってECU内部に入り込むこともあるため,雨漏れの前歴のある車両については,この点に留意する必要がある。 |
(2)AT車のエンジン・ルームの配線に不具合がある場合に実施する加振法として,D及びRレンジでストール・テストを行う手法がある。 |
(3)水掛け法により,エンジン・ルーム内の温度や湿度を変えたい場合,エンジン・ルームには直接水を掛けることなく,ラジエータ前面に水を霧状に吹き付けることによって行う。 |
解く |
(1)車室内に雨漏れがある場合,雨水が配線を伝わってECU内部に入り込むこともあるため,雨漏れの前歴のある車両については,この点に留意する必要がある。 適切
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(2)AT車のエンジン・ルームの配線に不具合がある場合に実施する加振法として,D及びRレンジでストール・テストを行う手法がある。 適切
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(3)水掛け法により,エンジン・ルーム内の温度や湿度を変えたい場合,エンジン・ルームには直接水を掛けることなく,ラジエータ前面に水を霧状に吹き付けることによって行う。 適切
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不適切 |
よって答えは 4
再現手法
故障診断を的確に行うためには,前述のように問診を十分に行い,不具合発生状況と類似した条件,環境を作り出して再現させることが必要不可欠である。 再現性の乏しい不具合の発生要因としては,振動,熱,水(湿度)などが考えられることから,ここではこれら外的要因を車両停止状態において加え,再現させる手段を紹介する。 再現テスト時の留意点 再現テストでは,不具合現象の確認はもちろん行うが,どの部位(部品)が不良なのか判定できなければならない。そのためには,再現テスト開始前に不具合現象に対応する不具合系統を推定し,テスタ類を取り付けておく必要がある。その上で再現テストを行い,現象確認と併せ,推定不具合系統の良否判定を同時に行う。なお,不具合現象に対する推定原因は,3)車載故障診断装置では確認できない故障の項を参照する。
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A加振法--振動により不具合が発生すると思われる場合
[部品,センサ] 推定不具合系統の部品,センサに指で軽く振動を与え不具合の発生がないか点検する。 注意 リレー類は,強い衝撃を与えるとポイントが開くことがある。
[配線,コネクタ] 配線を軽く上下,左右にゆすり,不具合の発生がないか点検する。特に ,配線では,コネクタのつけ根,振動の支点,ボデーの貫通部を重点に点検する。
[サービス・ヒント] 工ンジン・ルーム内の配線の不具合で,エンジンのトルク反力に傾いたとき不具合が発生する場合がある。このような場合,AT車でD及びRレンジでストール・テストを行うと再現することがある。 |
B冷熱法--冷間時又は温間時に不具合が発生すると思われる場合 [部品] ヘア・ドライヤ,冷却剤を用いて,推定不具合の部品を加熱又は冷却し、 不具合の発生がないか点検する。
注意 ・加熱する場合は,一般的な部品は60℃(手でさわれる程度)(エンジン・ ルーム80℃)以上にしない。 ・ECUなどのふたを開けて直接電子部品を加熱,冷却しない。 <参考>冷却剤は,電子部品販売店で入手できる。 |
C水掛け法--雨天又は高湿度時に不具合が発生すると思われる場合 [車両] 車両に水を掛け不具合の発生がないか点検する。
注意 ・エンジン・ルームには,直接,水を掛けないで,ラジエータ前面に霧吹き状に吹き付け,間接的に温度,湿度を変える。
・電子部品に,直接,水を掛けない。
〔サービス・ヒント〕 車室内に雨漏れがある場合,雨水が配線を伝わってECU内部に入り込む こともある。 したがって,雨漏れの前歴がある車両などは,特に注意する必要がある。
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Dその他--電気負荷大のときに不具合が発生すると思われる場合 (ユーザの使用状況がショート・トリップが多く,充電不足が考えられるとき) ヒータ・ブロワ,ヘッドランプ,リヤ・ウインド・デフォッガなどの電気負荷をすべてONにし,不具合の発生がないか点検する。 |