自動車整備士試験勉強 始めました~(^^♪

自動車整備士資格試験を解く

平成22年3月実施1級小型問題15:コモン・レール式高圧燃料噴射システムの制御

コモン・レール式高圧燃料噴射システムの制御に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。

 

(1)噴射圧力を高圧化することで液体の燃料が微粒化し,燃料の総表面積は大きくなり,周囲の吸入空気や熱とよく触れることで良い燃焼状態となり,PMの発生を低減できる。

 

(2)サプライ・ポンプ本体には,フェイス・カム,プランジャ及びスピル弁により構成されるフェイス・カム機構が採用され,従来の分配型インジェクション・ポンプのインナ・カム機構と比較すると超高圧化が可能となる。

 

(3)コモン・レールのレール部の燃料圧力は,レール圧センサにより計測され,エンジンECUにフィードバック信号として送られているため,常にエンジンの状態に適した圧力に保たれている。

 

(4)電磁弁制御式インジェクタの燃料の噴射は,電磁弁のON・OFFでアウタ・バルブを移動させ,コマンド・ピストンとノズル・ニードルに加わる高圧燃料の圧力のバランスを制御することで行われる。

 

 

 

解く

(1)噴射圧力を高圧化することで液体の燃料が微粒化し,燃料の総表面積は大きくなり,周囲の吸入空気や熱とよく触れることで良い燃焼状態となり,PMの発生を低減できる。

適切

 ジーゼル・エンジンは,ガソリン・エンジンのようなノッキングを生じないため圧縮比を高くすることができる。さらに,吸気の絞りを行う必要がないため,ほとんどの領域で空気過剰の希薄燃焼になる。空気が多く希薄燃焼になるため,排気温度も低くエンジンの耐久性もあり, CO (一酸化炭素) , HC (炭化水素)の発生も極めて少ない。しかし,排気ガス中に O2 (酸素)が多く存在するので,ガソリン・エンジンに使用されている三元触媒が,多量の O2 による触媒の効率低下のために使えない。そのため NOx (窒素酸化物)の低減が難しい。また,ジーゼル・エンジンは,一種の層状燃焼であり,燃焼は燃料噴射近傍のところで行われ,局部的空気不足を生じやすく, PM ( Particulate Matter :粒子状物質)(注参照)生成の問題を生ずる。

 ジーゼル・エンジンでは,特に,排気ガス中に合まれる有害な大気汚染物質となる PM , NOx をそれぞれ低減させることが最も重要になってくる。 PM は,完全燃焼させることで低減させることができるが, NOx は,完全燃焼すると燃焼ガス温度が高くなるため,より多く生成される。この PM と NOx は,同時に両者を低減することは,困難な関係にある。

 この問題を解決するためには,コモン・レール式高圧燃料噴射システムのように噴射圧力を高圧化することで液体の燃料を微粒化させ,微粒化したことで総表面積が大きくなり周囲の吸入空気や熱とよく触れることになり,良い燃焼状態になり PM の発生が低減する。さらに,微粒化したことで着火性が良くなるため噴射タイミングを遅角させることができ,着火遅れや燃焼期間が短くなることにより燃焼温度が低くなるため,NOx  の生成も低減できる。

 コモン・レール式高圧燃料噴射システムでは,図 4 - 1 に示すようにサプライ・ポンプで作られた高圧燃料をコモン・レールと呼ばれる高圧貯蔵室に蓄えており,エンジンの運転状態などを検出する各センサからの信号をもとにエンジン ECU が最適な噴射量と噴射時期を決定し,エレクトロニック・ドライビング・ユニット(以下, EDU という。)を介して電磁式インジェクタに通電することにより燃料を噴射している。

 

(2)サプライ・ポンプ本体には,フェイス・カム,プランジャ及びスピル弁により構成されるフェイス・カム機構が採用され,従来の分配型インジェクション・ポンプのインナ・カム機構と比較すると超高圧化が可能となる。

不適切

サプライ・ポンプ

サプライ・ポンプは,図 のように燃料をフューエル・タンクからサプライ・ポンプへ供給するフィード・ポンプ,ポンプ内の燃圧を調整するレギュレート・バルブ,ポンプ本体内への燃料吸入量を制御する 2 個のサクション・コントロール・バルブ,燃料をコモン・レールへ圧送するポンプ本体とデリバリ・バルブなどにより構成されている。

ポンプ本体は,インナ・カム,ローラ及びプランジャにより構成されるインナ・カム機構を採用しており,従来の分配型インジェクション・ポンプのフェイス・カム機構と比較すると超高圧化が可能となる。ポンプの駆動力は,ポンプ前方に取り付けられるタイミング・ギヤにより,クランクシャフトからドライブ・シャフトを介してインナ・カムに伝えられる。インナ・カムの内側には,二つのプランジャ・システムが直列に水平方向(プランジャ A )と垂直方向(プランジャ B )に配置されており,一方が吸入行程のとき,もう一方は圧送行程になる構造となっているため安定した燃料供給が行える。

(3)コモン・レールのレール部の燃料圧力は,レール圧センサにより計測され,エンジンECUにフィードバック信号として送られているため,常にエンジンの状態に適した圧力に保たれている。

適切

(4)電磁弁制御式インジェクタの燃料の噴射は,電磁弁のON・OFFでアウタ・バルブを移動させ,コマンド・ピストンとノズル・ニードルに加わる高圧燃料の圧力のバランスを制御することで行われる。

適切

インジェクタの作動

図のようにバルブ部は,ソレノイド・コイルの通電の有無によってオリフィスを開閉し,コマンド・ピストン上部に掛かる圧力を変化させることで噴孔を開閉している。

(イ)無噴射

図(1)のようにソレノイド・コイルへの通電が行われない状態では,バルプはバルプ・スプリングの力によってオリフィスを閉じるため,コモンレールからの高圧燃料は同圧力の状態で制御室とノズル室に流入する。制御室のコマンド・ピストンの径(断面積)はノズル・ードル下面の径(断面積)に比べて大きいので,受圧面積の関係上,ノズル・ードルは押し下げられるので噴孔は閉じており噴射は行われない。

(ロ)噴射

図(2)のようにソレノイド・コイルに通電が開始されると電磁力によりバルプはバルプ・スプリングのカに打ち勝って引き上げられ,オリフィスが開く。その結果,制御室の燃料は次第に流出し制御室の圧力が下がるので,ノズル・二ードル下面に掛かっていた圧力との圧力差により,ノズル・二ードルが上昇し噴射が開始される。

(ハ)噴射終了

ソレノイド・コイルへの通電を止めるとバルプはバルプ・スプリングの力により下降し閉じる。このとき,コモンレールの高圧燃料が一気に制御室に流入することでノズル・二ードルが急激に下降し,図(1)の状態に戻り噴射が終了する。