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平成19年3月実施1級小型問題15:コモン・レール式高圧燃料噴射システム

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コモン・レール式高圧燃料噴射システムに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。

 

(1)コモン・レールのレール部の燃料圧力は,レール圧センサにより検出され,常に一定の高圧力(100MPa以上)に保たれている。

(2)サプライ・ポンプの燃料をコモン・レールへ圧送するポンプ本体には,インナ・カム,ローラ及びプランジャにより構成されるインナ・カム機構が採用されている。

(3)コモン・レールのレール部の燃料圧力が目標圧力になるよう,サプライ・ポンプのサクション・コントロール・バルブのON・OFF時間をエンジンECUが決定して,燃料の量を制御している。

(4)電磁弁制御式インジェクタからの燃料の噴射は,電磁弁のON・OFFでアウタ・バルブを移動させ,コマンド・ピストンとノズル・ニードルに加わる高圧燃料の圧カのバランスを制御することで行われる。

 

解く

(1)コモン・レールのレール部の燃料圧力は,レール圧センサにより検出され,常に一定の高圧力(100MPa以上)に保たれている。

不適切

コモン・レール

 コモン・レールは,図 のようになっており高圧燃料を蓄え,インジェクタに供給することにより電子制御噴射を可能にしている。また,高圧システム内の圧力振動波を低減する機能も備えており,材料にはクロム・モリブデン鋼が用いられている。レール部の燃料圧力はレール圧センサにより計測され,エンジン ECU にフィードバック信号として送られているため,常にエンジンの状態に適した圧力( 20 ~ 135 MPa )に保たれる。また,プレッシャ・リミッタは,異常高圧時に燃料を逃がし安全性を確保している。

(2)サプライ・ポンプの燃料をコモン・レールへ圧送するポンプ本体には,インナ・カム,ローラ及びプランジャにより構成されるインナ・カム機構が採用されている。

適切

サプライ・ポンプ

サプライ・ポンプは,図  のように燃料をフューエル・タンクからサプライ・ポンプへ供給するフィード・ポンプ,ポンプ内の燃圧を調整するレギュレート・バルブ,ポンプ本体内への燃料吸入量を制御する 2 個のサクション・コントロール・バルブ,燃料をコモン・レールへ圧送するポンプ本体とデリバリ・バルブなどにより構成されている。

ポンプ本体は,インナ・カム,ローラ及びプランジャにより構成されるインナ・カム機構を採用しており,従来の分配型インジェクション・ポンプのフェイス・カム機構と比較すると超高圧化が可能となる。ポンプの駆動力は,ポンプ前方に取り付けられるタイミング・ギヤにより,クランクシャフトからドライブ・シャフトを介してインナ・カムに伝えられる。インナ・カムの内側には,二つのプランジャ・システムが直列に水平方向(プランジャ A )と垂直方向(プランジャ B )に配置されており,一方が吸入行程のとき,もう一方は圧送行程になる構造となっているため安定した燃料供給が行える。

(3)コモン・レールのレール部の燃料圧力が目標圧力になるよう,サプライ・ポンプのサクション・コントロール・バルブのON・OFF時間をエンジンECUが決定して,燃料の量を制御している。

適切

サプライ・ポンプ

作動

( a )吸入

図 ( 1 )の吸入開始状態では,プランジャはインナ・カム内径の最小部分に位置している。この状態からエンジン ECU からの ON 信号により,サクション・コントロール・バルブが開き,インナ・カムが回転していくと,フィード・ポンプからの燃料圧力によりプランジャは外側へ押し広げられ,ポンプ室に燃料が吸入される。

 

( b )圧送

エンジン ECU からの OFF 信号により,サクション・コントロール・バルブが閉じると,ポンプ室内への燃料の吸入が終わり,図 ( 2 )の圧送開始状態になると,プランジャはインナ・カム内径の最大部分に位置することになる。この状態から更にインナ・カムが回転して,カムがローラを介してプランジャを内側へ押し縮めるとポンプ室内の燃料が圧縮され,コモン・レールに高圧燃料が送り込まれる。

なお,エンジン ECU は,エンジンの状態からコモン・レールの目標圧力を算出し,レール圧センサの出力が目標値となるように,サクション・コントロール・バルブの ON ・ OFF 時間を決定して,ポンプ室内に吸入する燃料の量を制御することにより,サプライ・ポンプからコモン・レールに供給する燃料の量を調節している。

(4)電磁弁制御式インジェクタからの燃料の噴射は,電磁弁のON・OFFでアウタ・バルブを移動させ,コマンド・ピストンとノズル・ニードルに加わる高圧燃料の圧カのバランスを制御することで行われる。

適切

非噴射時

図 のように電磁弁に通電されていない状態(電磁弁 OFF )では,アウタ・バルブはスプリングカにより下方に押し付けられ,コマンド室の流出オリフィスが閉じられている。

コマンド室とノズル・ニードル下部( B 室)には,コモン・レールからの高圧燃料が掛かっている。このため,コマンド・ピストンには下向きの力が,ノズル・ニードルには上向きの力が作用しているが,ノズル・ニードルの上向きの力よりもコマンド・ピストンの下向きの力の方が,受圧面積が広いため大きい。したがって,ノズル・ニードルは閉じられ,噴射は行われない。

 

噴射時

電磁弁に通電が開始されると,図 のようにアウタ・バルブは引き上げられ,流出オリフィスが開くためコマンド室内の燃料が流出し,コマンド室の圧力が低下する。

このため,コマンド・ピストンとノズル・ニードルが持ち上げられ噴射が開始される。また,コマンド室からの流出オリフィスを通過した燃料の一部がコマンド・ピストンの下に流入し,コマンド・ピストンを燃圧によって持ち上げるため,インジェクタの応答性が向上する。更に,電磁弁に通電が続けられると,ノズル・ニードルはフル・リフトに達して噴射率(単位時間当たりの噴射量)は最大になる。この状態から電磁弁への通電が止まると,アウタ・バルブが下がり,非噴射時のように流出オリフィスが閉じられるため,ノズル・ニードルは急激に閉じられ噴射が終わる。以上のような電磁弁への通電,非通電を圧縮行程から膨張行程の間に 2 回繰り返すことにより,燃料噴射を 2 段階に分けている。

よって答えは1