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令和6年3月実施2級ジーゼル問題35:潤滑剤に関する記述

35

潤滑剤に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。

 

(1) ギヤ・オイルは,油性の小さいものを使用して強い油膜を形成させ,かつ,できるだけ粘度の高いものを使用して,摩擦を減らすことが重要である。

(2) グリースは,高温になるに従い軟化するので,高温箇所では比較的ちょう度の数値が大きい機械的安定性の高いものが必要である。

(3) ビスカス・カップリングに用いられるジメチル・シリコン・オイルは,他のオイルと比較して温度変化による粘度変化が大きいため,オイル粘度が高いことが要求される。

(4) PSFの性状で低温流動性の良否は,ステアリング・ホイールの操作性に大きく影響するだけでなく,オイル・ポンプの吸入によるキャビテーション音の発生にも影響する。

 

 

解く

(1) ギヤ・オイルは,油性の小さいものを使用して強い油膜を形成させ,かつ,できるだけ粘度の高いものを使用して,摩擦を減らすことが重要である。

不適切

ギヤ・オイル

ギヤ・オイルの油性

油性とは、オイルの粘度以外の性質の潤滑作用に関係ある要素、例えば、金属に対しての吸着性、油膜の形成力などを総称したものである。

ギヤ・オイルとしては、油性の大きいものを使用して強い油膜を形成させ、かつ、できるだけ粘度の低いものを使用して、摩擦を減らすことが重要である。

 

(2) グリースは,高温になるに従い軟化するので,高温箇所では比較的ちょう度の数値が大きい機械的安定性の高いものが必要である。

不適切

2)グリース

グリースに必要な性状としては、次のようなものがある。

(1)機械的安定性が高いこと

一般にグリースは、高温になるに従い軟化するので、高温箇所では比較的ちょう度(注参照)の小さく機械的安定性の高い(軟化しにくい)ものが必要である。

なお、グリースは使用中にせん断を受けると、軟化する傾向がある。

(2)酸化しにくいこと

グリースは、空気中に長期間放置されたり、高温で使用したりすると酸化してしまう。グリースが酸化すると悪臭を放ち、腐食性の酸化生成物を生じ、軟化又は硬化する。

なお、グリースは石けんが酸化触媒となるので、潤滑油よりもはるかに酸化しやすい。

酸化安定性を高くするには、精製度の高い原料を使用した上で、酸化防止剤を加える必要がある。

(3)油分離が少ないこと

グリースを長期間放置又は高温で使用していると、油分がグリース組織から分離することがある。

使用中における少量の分離は、潤滑作用の面では好ましいが、貯蔵中又は高温使用の際に多量の油分が分離したものは、軸受の寿命を短くするので好ましくない。

(4)耐水性が高いこと

グリースの耐水性は、主として増ちょう剤の種類によって決まる。例えば、ナトリウム石けん基のグリースなどは、使用したナトリウム石けんが水溶性のために水に接触すると溶解してしまう。

以上のことから、自動車用グリースには、機械的安定性、耐熱性及び耐水性にバランスのとれたリチウム石けん基のグリースが、多く使用されている。

 

 

(3) ビスカス・カップリングに用いられるジメチル・シリコン・オイルは,他のオイルと比較して温度変化による粘度変化が大きいため,オイル粘度が高いことが要求される。

不適切

シリコン・オイル

シリコン・オイルは、非常に粘度の高い鉱物油を基油に、それぞれの用途に見合った各種添加剤を加えたもので、エンジンのファン・クラッチ及びビスカス・カップリングなどに用いられているが、ここでは、ビスカス・カップリングに用いられているジメチル・シリコン・オイルについて概要を説明する。

ビスカス・カップリングの伝達トルクは、プレート差動回転速度と隙間及びオイルの粘度などに比例する。したがって、大きいトルクを伝達するためには、オイルの粘度が高いことが要求される。

ジメチル・シリコン・オイルは、粘度が50~3,000cm2/s(平方センチメートル毎秒)程度で水あめ状のものであり、他のオイルと比較して温度変化による粘度変化が極めて小さく、大気中で加熱したとき、油温が170℃位まではほとんど粘度の変化がない。しかし、このオイルをビスカス・カップリング内で使用すると摩耗粉の影響を受け、特に苛酷な条件下で使用すると、粘度の増加やゼラチンのように固まる(ゲル化)現象が起きてくる。そのため、ビスカス・カップリング・オイルには、ジメチル・シリコン・オイルに極圧剤を添加して、劣化及び粘度変化を少なくし、粘度の長期安定性をもたせている。

 

 

(4) PSFの性状で低温流動性の良否は,ステアリング・ホイールの操作性に大きく影響するだけでなく,オイル・ポンプの吸入によるキャビテーション音の発生にも影響する。

適切

PSF

PSFは、粘度の低い鉱物油や合成油を基油に、化学的安定性向上剤や耐摩耗性向上剤などの添加剤を加えたもので、運転条件や車種の違いによって様々な条件下で使用されている。また、装置に使用されている部品の材質が多岐にわたっているため、それらの部材への攻撃性の低いことが要求される。

なお、ATFをパワー・ステアリング用のフルードとして用いている車両もある。

PSFに必要な性状

(イ)低温流動性

低温流動性の良否は、ステアリング・ホイールの操作性に大きく影響するだけでなく、オイル・ポンプの吸入によるキャビテーション(注参照)音の発生にも影響する。特に粘度が高くなる冬季に必要な性能である。

(ロ)化学的安定性

パワー・ステアリング装置内のシール材として用いられるゴムとフルードと金属が化学反応し、ゴム部材の強度低下を引き起こす場合がある。ゴム部材の損傷を防止するためには、PSFのシール材に対する特性を向上させる必要がある。

(ハ)耐摩耗性・耐焼き付き性

オイル・ポンプには、べーン・ポンプが用いられているが、PSFの劣化は、ポンプの焼き付き、べーンの摩耗などの原因となるので、この性能が高いことが必要である。

(注)キャビテーションとは、液体が大きな力で吸引されたときに気泡が発生し、その部分が空洞となって渦が発生する現象のことである

 

 

よって答えは4