9
吸排気装置に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1) インタ・クーラは,ターボ・チャージャに送られる前の吸入空気を冷却して温度を下げ,空気密度を高めている。
(2) ターボ・チャージャの過給庄を制御するウェスト・ゲート・バルブは,過給圧が高くなり規定値に達すると閉じて,過給圧が規定圧以上にならないようにしている。
(3) ターボ・チャージャのタービン・ホイール及びコンプレッサ・ホイールの軸受には,スラスト・ベアリングが使用されている。
(4) 可変容量式の過給圧制御装置は,エンジン回転速度が低い低・中速域の場合,排気ガス流量が少ないので,可変ノズルの隙間を狭めてタービン・ホイールに作用する排気ガスの流速を制御している。
解く
(1) インタ・クーラは,ターボ・チャージャに送られる前の吸入空気を冷却して温度を下げ,空気密度を高めている。
不適切
インタ・クーラ
気体は一定圧力のもとでは,温度が高いほど密度は低く,温度が低いほど密度が高い。ターボ・チャージャでは,過給圧を上げ,充填効率を高めて出力を増大しているが,吸入空気が圧縮されて空気密度が高まる反面,吸入空気温度が上昇することにより空気密度の低下を招くなど相反する関係がある。そこで,この弊害をなくすため,圧縮された空気を冷却して温度を下げ,空気密度を高めることで過給機本来の充填効率の向上維持を補完する装置がインタ・クーラである。
インタ・クーラはアルミニウム合金製で空冷式と水冷式があり,図は,空冷式インタ・クーラの一例である。
(2) ターボ・チャージャの過給庄を制御するウェスト・ゲート・バルブは,過給圧が高くなり規定値に達すると閉じて,過給圧が規定圧以上にならないようにしている。
不適切
過給圧制御装置
ターボ・チャージャには,過給圧を制御する装置が設けられている。
ターボ・チャージャを低・中速域でも十分な過給を得られるように大きさを設定すると,高速域になったときに過給圧が高くなりすぎて,エンジンの耐久性を損なう結果となる。このことから,高速域での過給圧を制御する必要があり,制御方法には,ウェスト・ゲート・バルブ式や可変容量式などが用いられる。
(イ)ウエスト・ゲート・バルブ式
図のように過給圧が規定値に達すると,アクチュエータのダイヤフラムが過給圧によって押されるので,ウエスト・ゲート・バルブが開き,排気ガスの一部は,タービン・ホイールをバイパスしてマフラ側に排出される。
(3) ターボ・チャージャのタービン・ホイール及びコンプレッサ・ホイールの軸受には,スラスト・ベアリングが使用されている。
不適切
ターボ・チャージャの潤滑及び冷却はエンジン・オイルを利用して行なわれるが,タービン・ホイール及びコンプレッサ・ホイールは最高毎分約10数万回転するため,軸受には,フル・フローティング・べアリングが使用されている。このべアリングは,図のように,ハウジングとシャフトの間でオイルにより完全に浮いているため,シャフトの僅かなアンバランスによって発生する高速回転時の振動が吸収されると共に,べアリングの周速がシャフトの約半分となるため,耐久性に優れている。また,オイルにより全体が覆われているため,べアリングの冷却効果も高い。一方,シャフトの軸方向の荷重はフル・フローティング・べアリングでは受けられないため,スラスト・べアリングで受けている。
(4) 可変容量式の過給圧制御装置は,エンジン回転速度が低い低・中速域の場合,排気ガス流量が少ないので,可変ノズルの隙間を狭めてタービン・ホイールに作用する排気ガスの流速を制御している。
適切
可変容量式
過給圧制御は,ウエスト・ゲート・バルブ式を用いるのが主流であったが,近年は,図のような可変容量式が主流になってきている。
可変容量式は,図のようにタービン・ホイールに作用する排気ガスの流速を制御する可変ノズルと,ノズルの動きを制御するアクチュエータ及びリンク機構で構成されている。
エンジン回転速度が低い低・中速域では排気ガス流量が少ないので,可変ノズルの隙間を狭め,その間を通り抜ける排気ガスの流速を高い状態にし,タービン・ホイールに吹き付けている。このことによって,短時間でターボ・チャージャの回転を高め,設定した過給圧まで素早く立ち上がるようにしている。
エンジンの回転速度が高まる高速域では排気ガス流量が多くなり,低・中速域での可変ノズルの状態では通気抵抗が増大してしまうため,可変ノズルの隙間を広げることで排気圧力の上昇を防いでいる。
このように,低・中速域から高速域まで連続して可変ノズルの隙間を変え,過給圧を制御することにより,シリンダに供給される吸入空気量を最適化することができ,優れた排ガス性能にすると共に,エンジンの全回転域においてトルクと燃費の向上を実現することができる。
よって答えは(4)