28
スチール・ベルト式無段変速機(CVT)に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1)プーリに接しているスチール・ブロックのスチール・バンドをプライマリ・プーリが引っ張り寄せることで,動力を伝達している。 |
(2)スチール・バンドは,バンドにかかる曲げ応力の低減と強度確保のため,薄い複数枚のリング状スチール板を緊密に重ねた1本のバンド構造になっている。 |
(3)プライマリ・プーリとセカンダリ・プーリの可動シーブを対向させているので,スチール・ベルトの中心線の位置は,LOW時もオーバ・ドライブ時も同じである。 |
(4)運転条件に応じたライン・プレッシャを,プライマリ・プーリの油圧室にかけ,スチール・ベルトの動力伝達に必要なベルト張力を制御している。 |
解く
(1)プーリに接しているスチール・ブロックのスチール・バンドをプライマリ・プーリが引っ張り寄せることで,動力を伝達している。
不適切
セカンダリプーリ
セカンダリ・プーリの油圧室には,ライン・プレッシャを掛け,そのときの伝達動力に必要な接触面押し付け力(べルト張力)を与えている。ベルト張力は,入力トルクの大小と共に高速で回転するスチール・ベルトの遠心力も考慮して設定されている。
(2)スチール・バンドは,バンドにかかる曲げ応力の低減と強度確保のため,薄い複数枚のリング状スチール板を緊密に重ねた1本のバンド構造になっている。
適切
スチール・べルト
スチール・べルトは,図 のように数百個の厚さ 2mm のスチール・ブロックと,このスチール・ブロックを帯状に連結する 2 組のスチール・バンドで構成されている。
スチール・べルトは,ゴム・べルトやチェーンのように引っ張り作用で動力を伝達するものとは異なり,スチール・ブロック一個一個がプーリと接触しながら,次々と前側のブロックを押して動力を伝える圧縮型のべルトである。このため,ブロックは平板ではなく特別のふくらみを持った形状にしてブロック全体で動力を分担し,応力集中がないように設計されている。また,図のようにブロックの小さな凸部と凹部で相互の位置決めをしている。
ブロックを連結する 2 本のスチール・バンドは,ブロックの左右溝に挿入されている。
スチール・バンドは,絶えず径方向に折り曲げられて内径側には,圧縮応力,外径側には,引っ張り応力が発生する。この応力は,板厚が薄い方が小さくなるので,厚さ約 0 . 2 ㎜のリング状スチール板を使用し,かつ,強度を確保するために,このバンドを 9 枚緊密に重ねた構造となっている。
重ねられたバンドは,自由状態では,直径約 200mm の円形で,隣り合った個々のバンドは,板厚分の長さを変えて,しっくりとかん嵌合するように精密に製造されている。内径側のバンド長さと外径側バンド長さの差はπ(0.2×2×9)=11.3㎜あることになる。円形のバンドをプーリに巻き付けた場合,図 のようになるが,径がどのように変化しても半円形部の内外径差は 11.3㎜であり 9 枚の個々のバンドが周方向に滑り合うことはなく,柔軟性を持った 1 本のバンドとして荷重を受けることができる。
(3)プライマリ・プーリとセカンダリ・プーリの可動シーブを対向させているので,スチール・ベルトの中心線の位置は,LOW時もオーバ・ドライブ時も同じである。
不適切
プーリ
図 のようにプライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリは共に同一傾斜面を持つ固定シーブと可動シーブ(注 1 参照)が対向配置(点対称)され,可動シーブ側背面に油圧室(チャンバ)を設けている。
(4)運転条件に応じたライン・プレッシャを,プライマリ・プーリの油圧室にかけ,スチール・ベルトの動力伝達に必要なベルト張力を制御している。
不適切
CVT では,可動シーブを図のように対向配置することにより, LOW 側からオーバ・ドライブ側に変速することに伴ってスチール・べルトは軸方向に移動するが,べルトの中心線はほぼ一直線を保って平行移動するようになっている。
よって答えは(2)