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車両安定制御装置に関する説明として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)ABSは,濡れたアスファルト路面や氷雪路などの滑りやすい路面で急ブレーキをかけたときなどに,車輪がロックしないように制御する装置である。 |
(2)トラクション・コントロールは,エンジン出力制御及び駆動輪のブレーキ制御によって,駆動時における駆動輪のスリップを抑えるものである。 |
(3)ABS及びトラクション・コントロールは,主にブレーキ操作やアクセル操作に伴う制動時及び加速時の車両姿勢の安定性を確保するものであり,VSCSは車両旋回時の方向安定性を確保する装置である。 |
(4)VSCSは,応急スペア・タイヤ装着時でも,正常に作動する。 |
解く
(1)ABSは,濡れたアスファルト路面や氷雪路などの滑りやすい路面で急ブレーキをかけたときなどに,車輪がロックしないように制御する装置である。 適切 |
概要 濡れた路面や,氷結した道路(アイスバーン)などの摩擦係数の小さな路面を車で走行中,運転者が急ブレーキを掛けると,車輪がロックを起こし,適切な制動ができなくなることがある。このとき,後輪がロックすると方向安定性が低下し,更に前輪がロックすると操舵性が低下して車両が不安定な状態になる。アンチロック・ブレーキ・システム(以下,ABSという。)は,このような現象を防ぐために,車輪のスリップ率が大きくなると,その車輪のブレーキの作動油圧を自動的に減圧・増圧・保持させることで,車輪のロックにより生じるスリップ(スキッド)を防止し,制動時の方向安定性と操舵性の確保を図るシステムである。 |
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(2)トラクション・コントロールは,エンジン出力制御及び駆動輪のブレーキ制御によって,駆動時における駆動輪のスリップを抑えるものである。 適切 トラクション・コンロ―ル トラクション・コントロールは,エンジンの駆動力が伝達されている車輪のスリップを防止する装置である。 一般に,濡れたアスファルト路面や氷雪路など摩擦係数が低い路面などで発進及び加速時にスロットルを開け過ぎると,過大なトルクにより駆動輪がスリップして駆動力が低下し横抗力が失われる。このため,車両は加速不良となりフロント・エンジン・フロント・ドライブ( FF )式の車両では,前輪の横抗力が失われるため操舵ができず曲がらなくなる。また,フロント・エンジン・リヤ・ドライブ( FR )式では,後輸の横抗力が発生しないためオーバステア状態となる場合がある。トラクション・コントロールは,図 のように駆動輪のブレーキ制御及びフューエル・カットによるエンジン出力制御により駆動輪のスリップを
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(3)ABS及びトラクション・コントロールは,主にブレーキ操作やアクセル操作に伴う制動時及び加速時の車両姿勢の安定性を確保するものであり,VSCSは車両旋回時の方向安定性を確保する装置である。 適切 |
走る(加速),曲がる(旋回),止まる(減速)など車両の運動状態が運動性能の限界付近にあるときは,車両の動きが不安定になり危険である。また,濡れたアスファルト路面や氷雪路など摩擦係数の低い路面を走行しているときや,急ブレーキ及び急ハンドルなどの緊急回避操作を行ったときなどは,車両の運動状態が限界を超えて操縦困難となる。これを防止するために, ABS ,トラクション・コントロール,ビークル・スタビリティ・コントロール・システム(以下, VSCS という。 )を装着しており,三つの装置を作用させ車両の安定性を確保している。 ABS は,滑りやすい路面などで急ブレーキを掛けても車輪がロックしないようにする役割をし,トラクション・コントロールは.駆動輪のスリップを防止する役割をしている。また, VSCS は,車両の旋回方向の安定性を確保する役割をしている。なお,これら三つの装置は,各運動領域においてブレーキ制御を行うことから電子制御部品及びブレーキ油圧経路を共用している。 |
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(4)VSCSは,応急スペア・タイヤ装着時でも,正常に作動する。 |
不適切
VSCSが正常に作動しない場合
① 指定以外のサイズ,指定以外の空気圧,異なるメーカー,異なる銘柄,異なるトレッド・パターンのタイヤ装着したとき。
② 摩耗差の著しいタイヤを混ぜて装着したとき。
③ タイヤ・チェーン装着のとき。
④ 応急用スペア・タイヤを使用したとき。
よって答えは(4)