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自動車整備士資格試験を解く

平成18年実施検定1級小型問題21:EPS

21

一般的なEPSに関して述べた文章の正誤の組み合わせとして,適切なものは次の(1)~(4)のうちどれか。

 

(イ)モータの発熱のため,EPS・ECUが補助動力を制限している場合,イグニション・スイッチをOFFにすれば,直ちに通常の補助動力に戻る。

 

(ロ)イナーシャ制御は,ベース電流を制御することで,モータが持つ回転体の慣性により,起動時にはトルクが不足し,停止時にはトルクが継続する影響を低減させている。

 

(ハ)車速1km/h以下で,かつ,エンジン回転速度2000min-1以上を3秒継続したときシステムは正常でも,EPS警告灯は点灯する。

 

 

  (イ)/(ロ)/(ハ)

(1)正/正/誤

(2)正/誤/正

(3)誤/正/誤

(4)誤/誤/正

 

解く

 

(イ)モータの発熱のため,EPS・ECUが補助動力を制限している場合,イグニション・スイッチをOFFにすれば,直ちに通常の補助動力に戻る。

(ロ)イナーシャ制御は,ベース電流を制御することで,モータが持つ回転体の慣性により,起動時にはトルクが不足し,停止時にはトルクが継続する影響を低減させている。

(ハ)車速1km/h以下で,かつ,エンジン回転速度2000min-1以上を3秒継続したときシステムは正常でも,EPS警告灯は点灯する。

EPS警告灯は,システムが正常でも下記の条件のときに点灯する。

①車速1Km/h以下で,かっ,エンジン回転速度2000min-1以上を3分継続したとき。

②エンジン回転速度500min-1以下で,かつ,車速10Km/h以上を3秒継続したとき。

 

 

よって答えは3

 

基本制御

1.べース制御

べース制御は,モータを駆動する基本になる,べース電流の制御である。

べース電流は,操舵トルクと車速により算出しており,操舵力を決定するものである。車速によってモータ・トルク特性を切り替えることにより,路面反力の伝わり方や力の立ち上がりなどの感覚も制御している。

2.イナーシャ制御

イナーシャ制御は,モータの回転速度により変化する慣性力を制御するものである。

操舵トルク,車速及びステアリング操舵速度により行っており,べース電流をステアリング操作の増速時には増加させ,減速時には減少させることで,モータが持つ回転体の慣性により,起動時にはトルクが不足し,停止時にはトルクが継続する影響を低減させている。

3.ダンピング制御

ダンピング制御は,ステアリング・ホイールに伝わる小刻みな振動を低減させるための制御である。

操舵トルク,車速及びモータ速度により行っており,モータの回転速度に応じてステアリング操作の増速時に減算し,減速時で加算して補助動力特性に制動を与えている。低車速では,もどり特性を良くするためにダンピングを抑えている。

 

補正制御

1.もどり制御

もどり制御は,ステアリング操作の減速時に,逆起電力により発生する電流増加を制御するものである。

この制御は,モータ速度と車速により行っており,操舵速度が減速したときに,モータの回転による逆起電力によって発生する回生電流が流れてモータ電流が多くなるため,モータの回転速度に応じて,回生電流を制御し,電流フィードバック制御の精度を向上させている。

2.電流フィードバック制御

電流フィードバック制御は,モータに流れる電流を検出し,モータを駆動する口標電流との差を減少させて,モータを精度良く駆動するための制御である。

 

保護制御

1.アンローダ制御

アンローダ制御は,ステアリングを一杯に切った状態にしたときのモータ電流を低下させ,システムを保護するための制御である。

2.モータ出力制限制御

モータ出力制限制御は,連続した大電流での発熱からシステムを保護する制御である。

据え切り連続などのステアリング操舵を極端に繰り返したときは,モータ電流を低下させ,システムを保護している。

この制御が行われると,補助動力が徐々に低下する。補助動力の復帰は,操舵トルクがゼロ又は,イグニション・スイッチOFFから徐々に始まり,通常の補助動力に戻るのは最長で8分程度必要とする。