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平均値整流実効値校正方式のデジタル式サーキット・テスタを用いて,交流電圧を測定した場合の記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1)規定の周波数以内の方形波を測定した場合,真の実効値万式による測定値より約11%電圧を低く表示する。 |
(2)規定の周波数以内の正弦波を測定した場合,真の実効値方式による測定値より約1.11倍電圧を高く表示する。 |
(3)交流電圧を実効値に変換する際,計測している各波形に対応した波高率を掛け合わせて算出する。 |
(4)測定する交流電圧を実効値に変換するとき,正弦波の波形率を掛けて実効値に換算しているため,正弦波以外のものを測定した場合は大きな誤差が生じる。 |
解く
(1)規定の周波数以内の方形波を測定した場合,真の実効値万式による測定値より約11%電圧を低く表示する。
不適切
約11%電圧を高く表示する。
(1周期20ms 1000÷20=50Hz)
(2)規定の周波数以内の正弦波を測定した場合,真の実効値方式による測定値より約1.11倍電圧を高く表示する。
不適切
ほぼ同じ
(1周期20ms 1000÷20=50Hz)
(3)交流電圧を実効値に変換する際,計測している各波形に対応した波高率を掛け合わせて算出する。 不適切 |
平均値整流実効値校正方式のAC・DCコンバータは,入力された交流電圧を直流電圧(平均値)に変換したとき,正弦波であることを前提にしているため,正弦波の波高率から算出した波形率(1.11倍)を乗じて測定するため,正弦波以外の交流電圧の測定には測定誤差が大きくなる。 真の実効値方式は,実効値演算回路又はマイコンによるAC・DCコンバータを構成しているため,入力された交流電圧の波高率で計算し,実効値の算出を行うので,正弦波以外の交流電圧に対しても精度の高い測定を行うことができる。 |
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(4)測定する交流電圧を実効値に変換するとき,正弦波の波形率を掛けて実効値に換算しているため,正弦波以外のものを測定した場合は大きな誤差が生じる。 |
適切
平均値整流実効値校正方式デジタル・テスタは,交流電圧及び電流の平均値を測定し,それに一定の値(波形率)を掛け合わせることによって,実効値を算出する方式で,測定する交流電圧が正弦波であることを前提に,正弦波の平均値を測定し,正弦波の波形率(実効値/平均値= 1 . 1107 )を乗じて実効値の表示を行っている。
これによって,正弦波の実効値は正確に測定できるが,正弦波以外の波形については,予想外の大きな測定誤差が発生する。
ただし,測定波形と波高率が事前に判明していれば,測定値を補正して真値への校正が行える。
前述の真の実効値方式に比べると,回路が簡単で安価である。
クレスト・ファクタ(CREST FACTOR:波高率)
クレスト・ファクタは,デジタル・テスタがもっている交流波形に対する測定能力を表すもので,交流測定時,交流波形の波高の最大値(P)と実効値(RMS)との比(最大値/実効値)を係数で示している。
この係数は,交流計の波高値への飽和領域(テスタ精度許容点)がどの領域であるかを表すためのものである。また,クレスト・ファクタは次の式で表され,正弦波:=P/(P∕√2)=√2≒1.414,
三角波:√3≒1.732,パルス矩形波(デューティー比5%の場合):1/√(5∕100)≒4.472であるので,性能表にクレスト・ファクタ:<3」(3未満)とある場合,正弦波及び三角波は,測定精度許容範囲に入っているが,3以上のパルス矩形波は,このテスタでは測定しても正確な数値を表示できない。
よって答えは(4)