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平成18年実施検定1級小型問題8:ジェネレータ型のクランク角センサの点検

8

ジェネレータ型のクランク角センサの点検において,図1のように信号波形を確認した結果,正常な電圧値(両波高値)より低かったので,図2のようにエンジンECU側の信号端子を外し,センサ側の電圧値を点検した。このときの点検結果に関して述べた文章の正誤の組み合わせとして,適切なものは次の(1)~(4)のうちどれか。

(イ)信号電圧値が低いままであれば,エンジンECU本体に異常が発生している。

 

(ロ)信号電圧値が高くなり,正常な電圧値に回復すれば,センサ本体に異常が発生している。

 

(ハ)信号電圧値が低いままであれば,シグナル・ロータとピックアップ・コイルのエア・ギャップ過大の可能性がある。

 

 

  (イ)/(ロ)/(ハ)

(1)正/正/正

(2)正/正/誤

(3)誤/誤/正

(4)誤/誤/誤

 

解く

 

(イ)信号電圧値が低いままであれば,エンジンECU本体に異常が発生している。

信号線、信号アース線含めたセンサ側の異常

 

(ロ)信号電圧値が高くなり,正常な電圧値に回復すれば,センサ本体に異常が発生している。

エンジンECU本体に異常

 

(ハ)信号電圧値が低いままであれば,シグナル・ロータとピックアップ・コイルのエア・ギャップ過大の可能性がある。

 

 

よって答えは(3

 

 

車速センサ系統

車速センサは,二系統になっているが,

ここでは,そのうちの一系統であるパルス・ジェネレータ式の車速センサの点検について説明する。

車速センサ系統を点検するには,最小回転速度でロータを回したときに行うこと。

く断線点検>

図に示す電圧を測定して行う。

V2に電圧がなく,V1に電圧がない場合は,車速センサの不良。

V2に電圧がなく,V1に電圧があるとき,V3に電圧がない場合は,V1V3間の断線。

V2に電圧がなく,V3に電圧がある場合は,ECUの不良。

V2に電圧があるとき,V4に電圧がない場合はV2V4間の断線。

 

パルス・ジェネレータ式

パルス・ジェネレータ式は,4輪に取り付けられており,検出した信号電圧は,ECUに送られ,各車輪の速度や車体速度の計算に利用

される。

構造は,図(2)のように発電機形態のセンサが多く,車輪の回転部に取り付けられたロータ部とピックアップ・コイルで構成され,それらの間には,エア・ギャップが設けられている。車輪の回転により,ギヤ・パルサの突起部が,ピックアップ・コイルの先端を通過することにより,磁東密度が変化して交流電圧が発生する。

信号電圧を作るセンサの回路構成は,図に示すもので,ロータの回転に応じて,発生する起電力(交流電圧)がセンサの信号電圧であり,その起電力の信号電圧が入力回路を介してマイコンに入力される。

信号形態

信号電圧は,ロータの回転が遅い場合には,図(1)のような電圧と周波数を有し,回転が速くなると図(2)のように電圧,周波数は共に高くなる。したがって,最小信号電圧値をあらかじめ設定しているため,ECUは,入力回路により波形整形する電圧波形値が閾値をアップ・エッジしたとき,入力回路のカウンタ回路で5V安定化電源を基準として,図右のような方形波(スケア・ウェープ)に整形され,規定時間に発生するパルス数がカウントされて回転数と速度を検出する。

回転角度の検出は,ロータの1回転当たり歯数によって設定され,1周360度を歯数で除した値が1パルス時の角度であり,歯数が多いロータほど角度分解能が高くなる。

タイミングの検出は,発生した正弦波(サイン・ウェーブ)と入力回路で整形された方形波(スケア・ウェーブ)は相関関係にあるため,波形の立ち上がり又は波形の立ち下がりがタイミングの検出に利用される。

 

異常検知

異常検知範囲

パルス・ジェネレータ式センサは,電源電圧をもたす,自己起電力による信号電圧になるため,回路構成上,上限値に関わる異常検知はできない。

マイコンが異常検知する仕組みは,図(1)に示すようにマイコン閾値と検出信号の比較が行われ,マイコンは,図(2)に示す閾値をダウン・エッジしたときに異常検知を行う。

センサの機能低下(特性異常)や各配線に異常(接触抵抗の増大など)が発生し,プログラムのマップ・データと検出信号電圧とが一致しない場合でも,この信号電圧がプログラムのマップ・データで設定した異常検知不可範囲の電圧値に入っていれば,マイコンは異常検知せず,通常制御が行われる。

また,自己起電力をもつパルス・ジェネレータ式センサは,インピーダンス(注参照)が大きいものと,運転状況に応じてインピーダンスが大きくなるものがあり,信号以外の電圧(ノイズ)が混入して異常信号を発生する場合がある。これらのノイズ混入の対策では,ソフトウェアを使用し,マイコンが図左に示すように高速域でセンサ信号情報を検出する場合に,他の関連センサ情報との相関を比較して,ノイズ混入の異常検知を行うものがある。なお,高いインピーダンスを有するセンサ回路では,ノイズ除去の目的で信号線にシールド線を用いており,図右に示す信号線の破線で示す部分がこれに該当する。

(注)インピーダンスとは,交流回路における直流の場合の回路抵抗に当たるもので,電圧の最大値と電流の最大値との比で求められ,インピーダンスが高いほど,直流抵抗の影響は少なくなる。

 

異常検知の回路

①図のの部分の回路において,ECU内部,センサ内部,信号線,信号アース線のいすれかに断線がある場合と,••••の部分において,信号線と信号アース線に短絡がある場合には,入力回路には,信号電圧0Vが入力され,マイコンは,閾値をダウン・エッジする信号電圧を検出して異常検知を行う。

回路点検

パルス・ジェネレータ式センサの信号電圧の回路点検,センサの検出情報(検出物理量)と信号電圧の整合確認について説明する。

(i)信号電圧の回路点検(信号線,信号アース線など)

①ロータを,遅く回転させたときと速く回転させたとき(いずれも一定速度で回転),それぞれの状態で,図のV1~に規定の信号電圧が発生すること。

信号電圧が発生しなければ,ECUの異常,センサの異常,信号線の断線,短絡及び信号アース線の異常(断線)が推測できる。

②ロータを,遅く回転させたときと速く回転させたとき,それぞれの状態で,図のV1~とV2~に規定の信号電圧が発生し,かつ,等しければ,信号線及び信号アース線は正常である。V1~とV2~の電圧値が異なる場合は,信号線及び信号アース線の異常(断線,接触抵抗などの増大)が推測できる。

③ロータを,遅く回転させたときと速く回転させたとき,それぞれの状態で図のV3~とV4~に規定の信号電圧が発生し,かつ,等しければ,信号線は正常である。V3~とV4~の電圧値が異なる場合は,信号線の異常(断線,接触抵抗などの増大)が推測できる。

④ロータを,遅く回転させたときと速く回転させたとき,それぞれの状態で図のV5~とV6~には電圧が発生しないこと。V5~に電圧が発生し,V6~には発生しない場合は,信号アース線の異常(断線)が推測できる。

また,V5~とV6~に電圧が発生し,かつ,電圧値が等しい場合は,ECU本体の異常が推測できる。

⑤図のΩ1に導通があれば,シールド線及びシールド線のアース回路は正常である。

導通がなければ,信号線にノイズが重畳する原因となり,シールド線及びシールド線のアース回路の異常(断線)が推測できる。