19
EPSのアシスト・モータ又はECUに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)アシスト・モータには,トルクを制御するリニア駆動アクチュエータとして一般に永久磁石式DCモータが用いられている。 |
(2)アシスト・モータに流れる電流の大きさは,モータにかかる電圧をFET駆動回路を用いたパルス幅変調(PWM)駆動方式で変化させることにより制御されている。 |
(3)EPS・ECUは,トルク・センサ,車速センサ及びエンジン回転センサの信号をもとにアシスト・モータを駆動する基本制御並びに戻り制御などの補正制御やシステムの保護制御などの幅広い制御をしている。 |
(4)EPS・ECUは,イグニション・スイッチをONにしたときに行う初期診断やシステム作動中に行う常時診断により異常を検知した場合は,その内容にかかわらず,ただちにシステムを停止させる。 |
解く
(1)アシスト・モータには,トルクを制御するリニア駆動アクチュエータとして一般に永久磁石式DCモータが用いられている。 適切 アシスト・モータの種類 アシスト・モータは,DCブラシ・モータ,DCブラシレス・モータ(三相インバータ・モータ)などが該当する。 DCブラシ・モータでは,入力する電圧の極性を変えることで正転・反転駆動ができ,かつ,PWMを利用してデューティ比駆動することで起動トルク,回転トルク及び拘束トルク((注1):サーボ・ロックともいう。)を任意に設定できるようになっている。
注1:拘束トルク(サーボ・ロック)とは,通電状態でモータの回転を止めて,制御位置を固定し,転舵角度を維持する制御に使用される。
|
(2)アシスト・モータに流れる電流の大きさは,モータにかかる電圧をFET駆動回路を用いたパルス幅変調(PWM)駆動方式で変化させることにより制御されている。 適切 |
左図の回路構成におけるモータの駆動電圧特性は,右図で示すように駆動停止時には,0Vにあり,駆動時には,12Vに立ち上がる。図の連続駆動時には,12Vとボデー・アース電圧0V間を繰り返す電圧であり,一定周期の中で争○N時間を変化させるPWM制御が行われる。図の破線で示す部分がPWM制御の駆動電圧値を示したもので,図のように駆動電圧の○N時間が長い場合には,電圧が高く駆動電力は大きくなり,ON時間が短くになるに従い,電圧が低く駆動電力は小さくなる信号形態をもっており,リニアに変化する駆動電圧を制御することで,モータの駆動トルクを制御する。
(3)EPS・ECUは,トルク・センサ,車速センサ及びエンジン回転センサの信号をもとにアシスト・モータを駆動する基本制御並びに戻り制御などの補正制御やシステムの保護制御などの幅広い制御をしている。
適切
EPS制御
ECUは,トルク・センサと車速センサの信号をもとにアシスト・モータを駆動しており,図のようにモータを駆動するための基本制御,操作感覚を良くするための補正制御,システムを保護する保護制御などの機能により,モータを高精度,かつ,高速度で制御し,車庫入れなど軽さ重視の制御,運転感覚重視の制御,高速走行のしっかり感を重視する制御,モード切り替えスイッチによる軽め,標準,重めの制御などの運転者の幅広い要求に対応した制御を行っている。
(4)EPS・ECUは,イグニション・スイッチをONにしたときに行う初期診断やシステム作動中に行う常時診断により異常を検知した場合は,その内容にかかわらず,ただちにシステムを停止させる。 不適切 |
フェイルセーフ制御 フエイルセーフ制御は,故障などによりEPSに異常が発生したとき,可能な限り制御を行う。EPSが制御を正しく実行できなくなる場合は,安全上の配慮からフェイルセーフとして制御を停止し,補助動力無しのステアリングにするものである。 車載故障診断装置による診断には,システムの電源,各センサ,計算結果,出力電流に対してイグニション・スイッチをONにしたときに行う初期診断と,システム作動中,常に行う常時診断とがある。 異常があれば,警告灯を点灯させ,フェイルセーフ制御により,故障内容によって補助動力の暫定継続,減少,停止を行う。 車載故障診断装置による診断には,警告灯の故障点灯表示,ダイアグノーシス・コードの表示機能も持っている。 正常に回復したときのシステムの復帰も,回復次第直ちに復帰,イグニション・スイッチのON・OFFで復帰,ダイアグノーシス・コードの消去後に復帰の3種類があり,ステアリング操作に対する影響度を考慮して設定されている。 |
よって答えは(4)