2
ジーゼル・エンジンの排気ガスに関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1) 一般にSOF(可溶有機成分)は,燃料中の硫黄分が酸化して生成された硫黄化合物である。 ×
(2) 排気管から排出されるNOxは,燃料が不完全燃焼して,未燃焼ガスがそのまま排出されたものである。 ×
(3) ジーゼル・エンジンは,空気過剰率が大きく,空気を十分に供給して燃焼が行われるため,COの発生は極めて少ない。 ○
(4) コモンレール式高圧燃料噴射装置では,ポスト噴射の前に少量の燃料を噴射するプレ噴射を行いHCの排出を低減している。 ×
解く
(1) 一般にSOF(可溶有機成分)は,燃料中の硫黄分が酸化して生成された硫黄化合物である。
不適切
SOFは,比較的低沸点で溶媒抽出が可能な有機成分のことで,具体的には,燃料である軽油や燃焼室内に混入したオイルの未燃焼分である。
サルフェートは,燃料中の硫黄分が酸化して生成された硫黄化合物の総称であり,エンジンの高負荷時や酸化力の強い触媒がある場合に多量に生成される。
(2) 排気管から排出されるNOxは,燃料が不完全燃焼して,未燃焼ガスがそのまま排出されたものである。
不適切
HC
HCは,水素と炭素の化合物の総称で,完全燃焼したときは,Cは前述のようにCO2となり,H2(水素)は,次のようにH2Oとなる。
2H2+O2→2H2O
排気管から排出されるHCは,燃料が不完全燃焼して,未燃焼ガスがそのまま排出されたものである。
ジーゼル・エンジンでは,十分な空気の中で燃焼が行われるので,HCの発生は少ない。
(3) ジーゼル・エンジンは,空気過剰率が大きく,空気を十分に供給して燃焼が行われるため,COの発生は極めて少ない。
適切
排気ガスの発生過程
混合気が燃焼したあとの排気ガスの大部分は,N2(窒素),H2O(水,ただしこの場合は水蒸気)及びCO2(二酸化炭素)になるが,このほか,有害で大気汚染の原因物質となるCO(一酸化炭素),HC(炭化水素),NOX(窒素酸化物),PM(粒子状物質)などが発生する。
CO
COは,空気の供給が不十分などの理由によって,燃料が不完全燃焼したときに,次のように発生する。
2C(炭素)+O2(酸素)→2CO
しかし,空気の供給が十分で完全燃焼した場合は,次のようにCO2になる。
C+O2→CO2
ジーゼル・エンジンは空気過剰率が大きく,空気を十分に供給して燃焼が行われるため,COの発生は極めて少ない。
(4) コモンレール式高圧燃料噴射装置では,ポスト噴射の前に少量の燃料を噴射するプレ噴射を行いHCの排出を低減している。 ×
不適切
排気ガス浄化の対応策
ジーゼル・エンジンの排気ガスの主な成分であるNOX及びPMの低減方法について説明する。
(イ)NOXの低減
(a)燃料噴射の多段化
コモンレール式高圧燃料噴射装置では,メーン噴射の前に少量の燃料を噴射するプレ噴射を行いNOXの排出を低減している。
(b)EGR(排気ガス再循環)装置
排気ガスの一部をインテーク・マニホールドへ再循環させることにより,吸入空気中の酸素濃度が減少するので,最高燃焼ガス温度が下がりNOXの排出が低減できる。
(ロ)PMの低減
(a)エンジン本体の改良
多弁化や燃焼室形状の改良などにより,充填効率の向上や、燃料と空気の混合を最適にすることで燃焼改善を図りPMの発生を低減している。
(b)燃料噴射圧力の高圧化
コモンレール式高圧燃料噴射装置やユニット・インジェクタ式高圧燃料噴射装置では,燃料噴射圧力を高圧化することで燃料を微粒化させ,周囲の空気や熱とよく触れることで良い燃焼状態となりPMの発生が大幅に低減される。
また,上記以外の方法として後処理装置による低減があるが、後処理装置については「第6章吸排気装置」にて説明する。