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平成21年3月実施1級小型問題10:ステッピング・モータ(小規模ユニポーラ二相式)の回路点検

10

図1に示すステッピング・モータ(小規模ユニポーラ二相式)の回路点検に関する記述として,不適切なものはどれか。

(1)駆動停止時,V1の電圧は0Vである。

(2)駆動停止時,V1に12Vの電圧がなくアクチュエータに異常がないとき,V2に12Vの電圧がない場合は,V2測定部から上流側の回路の異常(断線,短絡)が考えられる。

(3)駆動時(ホールド・モードを除く),V3の電圧は図2のような波形である。

(4)駆動時(ホールド・モードを除く),V3,V4,V5,V6には図3のような電圧波形が発生する。

 

解く

(1)駆動停止時,V1の電圧は0Vである。

不適切

12V

(2)駆動停止時,V1に12Vの電圧がなくアクチュエータに異常がないとき,V2に12Vの電圧がない場合は,V2測定部から上流側の回路の異常(断線,短絡)が考えられる。

適切

(3)駆動時(ホールド・モードを除く),V3の電圧は図2のような波形である。

適切

 

(4)駆動時(ホールド・モードを除く),V3,V4,V5,V6には図3のような電圧波形が発生する。

適切

よって答えは1

 

解説

 

ステッピング・モータ(小規模ユニポーラ・二相励磁式)

 に示すステッピング・モータでは,二相励磁式のユニポーラ駆動を行い,パルス周波数に同期して回転するモータで,パルス周波数の可変に応じた回転角度(1ステップずつ)などを制御しており,小規模アクチュエータのISCV,EGRバルブなどに用いられ,車両の運転条件により駆動される。

 は,ユニポーラ駆動の原理で,1つのコイルの両端と中央部に端子があり,片側ずつどちらか使用するコイルを切り替えることによりのユニポーラ(単極性)駆動を行う。

(a)回路構成

 駆動回路の構成は,のようにコイル中央部の電源をマイコンからの信号電圧によりECU内の駆動回路のTrAをONさせるか,TrBをONさせるかを切り替えることにより,A又はBコイルの磁極がユニポーラ(単極性)駆動する。

 

モータの端子数は,一相に対し3端子と多くなるが,駆動回路は一相に対し2個のトランジスタで良い。

(参考)ユニポーラ用モータでも中央部の端子を使用せずに,両端の端子のみをバイポーラ用の駆動回路に接続することで,バイポーラ駆動として使用することができる。

(b)信号形態

 ユニポーラ駆動は,のようにフィールド・コイル(以下,コイルという。)の中心にコモン端子を設け,そこに電源電圧を掛けておき,残りのA,B,C,Dの4端子を駆動回路のTrでアースに落とすことで,励磁コイルを相互に変えてステータの極性を変化させ,駆動回路からのパルスの入力順序を変えることで回転方向のCW及びCCW制御が行われる。

は,駆動回路からのCW駆動時の駆動電圧波形で,のコイルはA→C→B→Dの順序で励磁される。

また,は,駆動回路からのCCW駆動時の駆動電圧波形で,図のコイルは,D→B→C→Aの順序で励磁される。

駆動制御は,マイコンからの信号電圧により,駆動回路からのパルス周波数を可変することで回転角度保持から最高回転速度までの広範囲の制御を行う。また,二相コイルを使用するため,電流も約二倍必要になるが,バイポーラ駆動一相式のものと比べると,駆動トルクも大きくなりロータは二つの相の電磁力で回転するため,回転ステップ誤差が小さくなるメリットがある。

(c)異常検知

 ハードウェアによる異常検知は,回路構成の仕組みが設定されていないためできない。また,ソフトウェアによる異常検知は,他のセンサとの類推比較で車両の運転上ありえないものを対象として検知するものもあるが,その方法は車両によって異なる。

 

(d)回路点検

 ステッピング・モータ(小規模ユニポーラ・二相励磁式)の回路点検は,駆動停止時及び駆動時における駆動信号電圧,駆動電圧などについて説明する。

 

 この回路では,CW駆動からCCW駆動になるときは,二相のコイルにそれぞれ流す電流の順序を変えることにより,モータが逆回転するだけなので,CW駆動時における,に示すAの回路のCW駆動の回路点検について説明する。

ここでは,駆動電源線とは,電源。アクチュエータ(二対コイル)のコモン端子間の配線をいい,駆動電圧とは,コイル両端(コモン端子。コイル端子間)に発生する電圧をいう。

(ⅰ)駆動電圧の回路点検

① 駆動停止時の点検

㋑ V1の駆動信号電圧が12Vであること。

12Vでなければ,

 

ECU本体の異常,

駆動電源線,

アクチュエータのコイル(以下,アクチュエータという。),

動線

のいずれかの異常(断線,短絡)が推測できる。

 

 

V1に12Vの電源電圧の発生がなくアクチュエータに異常がないとき,V2に12Vの発生がない場合は,

 

V2測定部のコモン端子から上流側の駆動電源線の異常(断線,短絡)

及び下流側駆動電源線の異常(短絡)が推測できる。

② 駆動時の点検

㋑ に示すV1の駆動電圧が,のような波形であること。

の波形に一致しないとき,アクチュエータの抵抗値やインダクタンスを測定し,アクチュエータのそれぞれの数値が正常であれば,

 

ECU本体の異常,

駆動電源線,

駆動信号線の異常(断線,短絡接触抵抗などの増大)

が推測できる。

 

 

 なお,この回路では,ホールド・モード(駆動時)には,端子毎に電源電圧で固定する端子と電圧の発生しない端子が混在するので注意すること。

(ⅱ)駆動情報と駆動電圧の整合確認

① のアクチュエータを駆動停止時⇒駆動時にし,のの駆動電圧をオシロスコープで測定したとき,の駆動電圧特性に示すような矩形波であれば,ECU本体,ECU電源線,駆動信号線,ECUアース線及びボデー・アースは正常で,アクチュエータには短絡がない。

② 測定電圧特性が図に示す駆動電圧特性から外れる場合は,(ⅰ)駆動信号電圧の回路点検を例に,不具合箇所の切り分けなどにより,ECU本体,ECU電源線,駆動信号線,ECUアース線,ボデー・アース,アクチュエータのいずれかの異常を推測する。