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自動車整備士資格試験を解く

平成18年実施検定1級小型問題18:ABS

18

ABSに関して述べた文章の正誤の組み合わせとして,適切なものは次の(1)~(4)のうちどれか。

 

(イ)ABSは,車輪のスリップ率が最大になるようにブレーキの油圧を制御している。

(ロ)車輪速度が推定車体速度より急激に下がると,ブレーキ圧を保持する。さらに,車輪速度が低下すると,ブレーキ圧を増圧する。

(ハ)ABSの作動頻度が異常に多い場合の不具合原因のひとつとして,車輪速センサのピックアップ部の鉄片付着が考えられる。

 

 

 (イ)/(ロ)/(ハ)

(1)正/正/誤

(2)正/誤/正

(3)誤/誤/正

(4)誤/正/誤

 

解く

 

(イ)ABSは,車輪のスリップ率が最大になるようにブレーキの油圧を制御している。

(ロ)車輪速度が推定車体速度より急激に下がると,ブレーキ圧を保持する。さらに,車輪速度が低下すると,ブレーキ圧を増圧する。

(ハ)ABSの作動頻度が異常に多い場合の不具合原因のひとつとして,車輪速センサのピックアップ部の鉄片付着が考えられる。

 

 

よって答えは3

 

車載故障診断装置で表示されない故障の不具合状況と推定原因

不具合の状況

不具合の推定原因(注意事項等含む)

タイヤがロックしてしまう

当該タイヤ側のOUT側モジュレータ・バルブが閉側に固着

プレーキの効きが悪い

注:低路走行時は非装着車より長くなることあり(積雪時,アイスバーン時など)

エアの混入,油圧系統不良,車輪速センサの取り付け不良・ピックアップ部の鉄片付着・ロータの歯欠け・配線系統不良・コネクタ接続不良,制動力配分の不良,OUT側モジュレータ・バルブ漏れ

作動時異音がする

注:変速時・突起や溝通過時・エンジン始動直後の発進時に,緩制動(ペダルに足をのせる程度)のとき,及び,低路・高速旋回時・突起通過時の通常制動時などには発生するときあり

センサ配線のシールド線アース不良,車輪速センサの取り付け不良・ピックアップ部の鉄片付着・ロータの歯欠け・配線系統不良・コネクタ接続不良

プレーキが片効きする

左右片側のOUT側モジュレータ・バルプ閉側に固着又は漏れ

通常ブレーキ時,ABSが作動する,作動頻度が多い

車輪速センサの取り付け不良・ピックアップ部の鉄片付着・ロータの歯

欠け・配線系統不良・コネクタ接続不良,フロント・アクスルのガタ大,制動力配分の不良

ブレーキ・ペダルのストロークが大きい

工アの混入,油圧系統不良,OUT側モジュレータ・バルブ漏れ

ABS機能が作動しない

注:車輪速度が低いとき作動しない場合あり

車輪速センサの取り付け不良・ピックアップ部の鉄片付着・ロータの歯欠け・配線系統不良・コネクタ接続不良

 

 

ABS制御

ECUは,図に示すように各車輪速センサからの信号によって車輪速度を検知し,すべての車輪速度をもとに車体速度を推定する。推定(又は疑似)車体速度をもとに車輪のスリップ率を計算し,目標スリップ率になるように,モジュレータ・ユニットのモジュレータ・バルブとポンプを作動させ,ブレーキ液圧を制御する。前輪のブレーキ液圧は,左右独立に制御し,後輪はロックしやすい方(車輪速度が低い:ロ・セレクト)を基準にして左右同時に制御している。

 

車輪速度制御

ABS は,スキッド・エレクトロニック・コントロール・ユニット(以下,スキッド ECU という。)(注参照)により,四つの車輪速センサからの信号をもとに 4 輪の車輪速度を演算すると共に,車輪加速度を演算し車輪のスリップ状態を判断する。そして,その状態に応じて下図に示す三つのモード(減圧,保持,増圧)を行うソレノイド・バルブに対して制御信号を出力する。これにより, 4 輪のホイール・シリンダの油圧を制御し車輪ロックを制御している。

(注)スキッド ECU のスキッドとは,横滑りのことである。

作動

 

ブレーキ・ペダルを踏み込むと,ホイール・シリンダに掛かる油圧が増圧され( X ~ A 間),車輪速度が低下して,車輪速度と実車体速度との差が大きくなり,

車輪減速度が設定値( - b )より低くなると,保持信号が発生し,ブレーキ油圧をそのときの油圧に保持し,同時にあらかじめ設定された擬似車体速度がコントロール・ユニットで演算される。

更に,

車輪速度が低下して B 点までくると,

スリップ率の設定値(擬似車体速度からあらかじめ決められた値だけ低く設定された速度)より低くなるので,車輪ロックの恐れがあると判断し,減圧信号を発生して油圧を減圧する。

この減圧により,車輪加速度が増加して C 点までくると,設定値( - b )より高くなるので,保持信号を発生してブレーキ油圧をそのときの油圧に保持するが,更に,車輪加速度が増加して D 点までくると,設定値( + b )より高くなるので,車輪ロックの恐れがなくなったと判断し,増圧信号を発生してホイール・シリンダへの油圧を増圧する。以上のように増圧,保持,減圧を繰り返して油圧を制御することにより,車輪は適切な制動力を保持する。