ABS及びスリップ率に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)次のような不具合においては,故障コードを表示する。a.パルサの歯欠け b.異径タイヤ装着 c.ブレーキパイプ内へのエア混入 |
(2)ABS警告灯は,システムが正常でも次のような状況下では点灯することがある。a.駆動輪のみの回転 b.駆動輪の片輪スタック c.車両スピン |
(3)ブレーキの液圧は,路面とタイヤ間の摩擦係数とコーナリング・フォースとの関係から最適な目標スリップ率になるように制御されている。 |
(4)スリップ率が100%とはタイヤが完全にロックしている状態である。また,スリップ率が大きくなるほどタイヤのコーナリング・フォースは小さくなる。 |
解く
(1)次のような不具合においては,故障コードを表示する。a.パルサの歯欠け b.異径タイヤ装着 c.ブレーキパイプ内へのエア混入 不適切 |
(2)ABS警告灯は,システムが正常でも次のような状況下では点灯することがある。a.駆動輪のみの回転 b.駆動輪の片輪スタック c.車両スピン 適切 |
ABS・ECUは,IG 2の電源で起動するため,スタータ・モータ回転時は電源が切れるため,エンジン始動後にもABS警告灯が再点灯し,2秒後に消灯する。 ABS警告灯は,システムが正常でも次のような状況下では異常と検出し,点灯することがある。したがって,これらのことも想定して問診を行い,システムが正常と判断できた場合は,ダイアグノーシス・コードを消去する。 ⅰ)駆動輪のみの回転 ⅱ)駆動輪の片輪スタック ⅲ)車両スピン ⅳ)長時間のABS制御状態 ⅴ)外乱信号(ノイズ) |
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(3)ブレーキの液圧は,路面とタイヤ間の摩擦係数とコーナリング・フォースとの関係から最適な目標スリップ率になるように制御されている。 適切 |
ABS 制御 ECUは,図に示すように各車輪速センサからの信号によって車輪速度を検知し,すべての車輪速度をもとに車体速度を推定する。推定(又は疑似)車体速度をもとに車輪のスリップ率を計算し,目標スリップ率になるように,モジュレータ・ユニットのモジュレータ・バルブとポンプを作動させ,ブレーキ液圧を制御する。前輪のブレーキ液圧は,左右独立に制御し,後輪はロックしやすい方(車輪速度が低い:ロー・セレクト)を基準にして左右同時に制御している。
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(4)スリップ率が100%とはタイヤが完全にロックしている状態である。また,スリップ率が大きくなるほどタイヤのコーナリング・フォースは小さくなる。
適切
滑りやすい路面(低路)を走行中,ブレーキを強くかけると車輪がロックし車体姿勢が乱れ安全性が損なわれることがある。
これは,車輪がロックすると車輪の進行方向及び横方向の路面摩擦係数(横すべり摩擦係数)が低下してしまうためで,この結果、路面の凹凸による横方向からの外力や、ブレーキのわずかな片効きによっても車両は簡単に横滑り(スピン)が発生する。
図は舗装路面におけるスリップ率と摩擦係数の関係を示したもので,進行方向の摩擦係数はスリップ率20~30%前後で最大になり,それより大きくなるほど低下する。これに対し、横すべり摩擦係数(コーナリング・フォース)はスリップ率が0%のとき最大を示し,これよりスリップ率が大きくなるにしたがい急激に低下する。そしてスリップ率100%(ロック)付近ではほほ、ゼロ近くまで低下してしまう。
4輪アンチロック・ブレーキ装置は,進行方向では最も大きな摩擦係数が得られそして,コーナリング・フォースも比較的大きな値カ保できる、スリップ率20~30%付近で常に制動できるように制動力をコンピュータで制御したもので、次の点に優れているのが特徴である。
①制動時の方向安定性
②制動時の操舵性
③路面摩擦係数の変化時の対応
よって答えは(1)