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タイヤに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)タイヤのはね定数は,タイヤの構造,形状,荷重などの要因によって乗り心地に影響する縦ばね定数と,駆動系の前後方向の振動に影響する前後ばね定数に分けられ,空気圧に大きく影響されるのは縦ばね定数である。
(2)バイアス・タイヤは,ラジアル・タイヤよりエンべロープ特性が良いため,ハーシュネス測定時の音圧レベルは高い。これは,タイヤの構造に剛性の高いベルトを用いることから振動強制力を吸収する能力が低いためである。
(3)ユニフォミティに起因する不具合は,タイヤの縦振れを修正することにより,解消することが多いが,縦振れを修正してもRFVが残る場合がある。
(4)ロード・ノイズは,80Hz~300Hzの振動周波数をもち,バイアス・タイヤの一次から三次成分の固有振動数に関係があり,ハーシュネス発生時には,30Hz~60Hzの振動周波数をもち,ラジアル・タイヤの一次成分の固有振動数に関係がある。
解く
(1)タイヤのはね定数は,タイヤの構造,形状,荷重などの要因によって乗り心地に影響する縦ばね定数と,駆動系の前後方向の振動に影響する前後ばね定数に分けられ,空気圧に大きく影響されるのは縦ばね定数である。
適切
ばね定数
ばね定数は,自動車の振動を左右する要因の一つであり,図のように縦ばね定数と,前後ばね定数に分けられる。縦ばね定数は,乗り心地に影響し,タイヤの構造,形状や荷重などの要因によるが,特に大きな要因は空気圧である。また,前後ばね定数は,駆動系の前後方向の振動に影響する。
(2)バイアス・タイヤは,ラジアル・タイヤよりエンべロープ特性が良いため,ハーシュネス測定時の音圧レベルは高い。これは,タイヤの構造に剛性の高いベルトを用いることから振動強制力を吸収する能力が低いためである。
不適切
エンべロープ特性
エンべロープ特性とは,タイヤが路面の凹凸を包み込む性質であり,特に,ハーシュネスに関係がある。
図のようにバイアス・タイヤとラジアル・タイヤのエンべロープ特性では,バイアス・タイヤの方がよい。これは,タイヤの構造によるもので,ラジアル・タイヤは,剛性の高いベルトがエンべロープ特性にマイナスとなる。また,ハーシュネスを測定した図から,ラジアル・タイヤの方が,音圧レベルが高いことが分かる。これは,ラジアル・タイヤの方がエンべロープ特性が悪いために,路面の凹凸(特に道路継ぎ目などの突起)による振動強制力を吸収する能力が低いためである。
(3)ユニフォミティに起因する不具合は,タイヤの縦振れを修正することにより,解消することが多いが,縦振れを修正してもRFVが残る場合がある。
適切
ユニフォミティ
ユニフォミティは,タイヤ製造工程中のトレッド・ゴム,カーカス・コード,ベルトなどの部材のバラッキによる寸法と剛性の均一性のことで,ラン・アウトとフォース・バリエーションとがあり,振動強制力の原因となる。
ラン・アウト(振れ)
ラン・アウトは,寸法の均一性である。図のようにタイヤ半径方向と軸方向の振れがあり,それぞれラジアル・ラン・アウト(縦振れ)とラテラル・ラン・アウト(横振れ)という。
フォース・バリエーション
フォース・バリエーションは剛性の均一性のことで,それには,図のように次の三つのフォース・バリエーションがある。
RFV(ラジアル・フォース・バリエーション)
・タイヤの半径方向(縦方向)のカの変動の大きさ
LFV(ラテラル・フォース・バリエーション)
・タイヤの幅方向(橫方向)のカの変動の大きさ
TFV(トラクティブ・フォース・バリエーション)
・タイヤの周方向(回転方向)のカの変動の大きさ
ユニフォミティの修正は,振れと剛性の不均一をなくすことである。
実際には,図のように,振れとRFVはある程度の相関があり,ユニフォミティに起因する不具合は,縦振れを修正することにより,解消することが多い。しかし,縦振れを修正しても,RFVが残る場合は,タイヤ内部の構造によるものである。この場合,修正は不可能であり,タイヤを交換しなければならない。
(4)ロード・ノイズは,80Hz~300Hzの振動周波数をもち,バイアス・タイヤの一次から三次成分の固有振動数に関係があり,ハーシュネス発生時には,30Hz~60Hzの振動周波数をもち,ラジアル・タイヤの一次成分の固有振動数に関係がある。
適切
固有振動数は,自動車の振動・騒音に関係する大きな要因の一つである。タイヤは自由振動が大きいため,多数の固有振動数がある。図は,この変形自由度を次数で表したもので,タイヤの固有振動数と次数の例である。ロード・ノイズは,80~300HZの振動周波数をもち,バイアス・タイヤの場合では,一次~三次成分の固有振動数と関係がある。また,ハーシュネスの場合では,30~60Hzの振動周波数をもち,ラジアル・タイヤの一次成分の固有振動数に関係がある。
よって答えは(2)