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前進4段のロックアップ機構付き電子制御式ATに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)電子制御式ATは,センサ,ECU,アクチュエータのどれかに支障が出ても車が走行できる最低限の条件を備えている。
(2)電子制御式ATは,複数のシフト・ソレノイド・バルブのON・OFFの組み合わせにより必要な変速を行う。
(3)油温センサが短絡すると,AT・ECUはライン・プレッシャ・ソレノイド・バルブをONにするためライン・プレッシャは常時最大となり,4速(オーバドライブ)への変速も禁止する。
(4)シフト・ポジション・センサのセレクト位置信号がAT・ECUへ入力されないときは,直前の信号を入力信号とみなし,走行できるようにしている。
解く
(1)電子制御式ATは,センサ,ECU,アクチュエータのどれかに支障が出ても車が走行できる最低限の条件を備えている。
適切
フェイルセーフ機能
ECUは,センサ,ECU,アクチュエータの三つの要素がそろって,正常に働くのである。もし,それらのどれかに支障が出ても,車が走れるように最低の条件は備えている。
ECUへの入力として重要なセンサは,車速センサ1とスロットル・ポジション・センサであるが,もし,この二つが不具合になった場合は,車速センサ2とスロットル・バルブ・スイッチを予備としている。
一方,アクチュエータとして,5個のソレノイド・バルブがあるが,これらには,診断回路が各々付いており,断線又は,短絡を常にチェックし,異常の場合はECUからOFF信号を発信し,アクチュエータが誤作動しないようにしている。
(2)電子制御式ATは,複数のシフト・ソレノイド・バルブのON・OFFの組み合わせにより必要な変速を行う。
適切
変速制御
変速制御は,走行状態に応じて,図1一174のように各センサからの入力信号に基づき,ECUがそのときの走行状態を認識し,ECU内に記憶された図1一175に示す変速点特性図に従ってシフト・ソレノイド・バルブA,Bへ信号を送り,シフト・バルブA,BをON・OFFさせ油路を切り替えている。
(イ)通常時
通常時は,ECUがエンジンの状態をスロットル・ポジション・センサ及び車速センサ1,2の信号により判断し,決められた変速点特性図に従い最適なギヤ位置にする。
(口)低温時
ATFの温度が10℃以下では,Dレンジ第4速(オーバドライブ)への変速禁止を行う。
(ハ)Dレンジ第4速(オーバドライブ)
Dレンジ第4速(オーバドライブ)の作動は,ECUがある一定の条件を検知したときのみDレンジ第4速(オーバドライブ)へ変速する。なお,作動条件の一例は表1一1のようになっている。
(3)油温センサが短絡すると,AT・ECUはライン・プレッシャ・ソレノイド・バルブをONにするためライン・プレッシャは常時最大となり,4速(オーバドライブ)への変速も禁止する。
不適切
フェイルセーフ項目以外
(イ)油温センサ
(a)断線時
断線すると,抵抗は無限大(∞Ω)となり,ECUには,極低温の信号が入力することになる。したがって,極低温時の制御に基づいてライン・プレッシャは常時最大となり,セレクト・ショック,変速ショック共に大きく,4速(オーバドライブ)への変速は禁止となる。
(b)短絡時
短絡の場合は,抵抗がOΩとなるので,断線時とは逆に極高温の信号が入力されることになる。したがって,高温時は特別な制御はしていないので,通常の走行では影響は出ない。ただし,低温時の制御はできなくなる。
(4)シフト・ポジション・センサのセレクト位置信号がAT・ECUへ入力されないときは,直前の信号を入力信号とみなし,走行できるようにしている。
適切
シフト・ポジション・センサ
シフト・ポジション・センサの出力は,ATの油圧回路がどのレンジを選択しているかを,ECUに知らせる役目であるが,同時に別のレンジ信号が入ったり,信号が欠落したりすると,ECUは,変速信号をどう出してよいか分からなくなるので,そのとき異常を検知すると共に,次の取り決めで変速を行うようにしている。
ⅰ)複数信号の入力時
複数の信号がECUに入力した場合は,電気的には,D>2>1の優先順の入力信号となり,4速(オーバドライブ)への変速を禁止する。
ECUは表1一4のように制御する。
ⅱ)無信号時
ECUにセレクト位置信号が入力されない場合,直前の信号を入力信号とみなし,走行できるよう制御する。例えば,2レンジ信号が入力しなかった場合は,Dレンジから2レンジにシフトしたときは,Dレンジ信号を入力とする。また,1レンジから2レンジにシフトしたときは,1レンジ信号を入力信号とする。
実際の変速はマニュアル・バルブとの関係から表1一5のようになる。
よって答えは(3)