自動車整備士試験勉強 始めました~(^^♪

自動車整備士資格試験を解く

平成18年実施検定1級小型問題4:コモン・レール式高圧燃料噴射システム

4

コモン・レール式高圧燃料噴射システムに関する記述として,適切なものは次のうちどれか。

 

(1)高圧燃料をフューエル・フィルタに蓄えることで,常に安定した噴射圧力を確保できるためエンジン性能が向上する。

(2)燃料の微粒化により着火性が良くなるため噴射タイミングを遅角させることができ,着火遅れや燃焼期間が長くなることにより燃焼温度が低くなるため,NOxの発生を低減できる。

(3)メイン噴射の前に補助的なパイロット噴射を行うことにより,メインの燃焼が緩やかに開始するため,エンジンの振動及び騒音を低減できる。

(4)高圧燃料系の接続部を締め付ける場合は,燃料漏れを防止するため,基準値を超えた値で行うべきである。

 

解く

(1)高圧燃料をフューエル・フィルタに蓄えることで,常に安定した噴射圧力を確保できるためエンジン性能が向上する。

不適切

コモンレール

 コモン・レールは,図のようになっており高圧燃料を蓄え,インジェクタに供給することにより電子制御噴射を可能にしている。また,高圧システム内の圧力振動波を低減する機能も備えており,材料にはクロム・モリブデン鋼が用いられている。レール部の燃料圧力はレール圧センサにより計測され,エンジン ECU にフィードバック信号として送られているため,常にエンジンの状態に適した圧力( 20 ~ 135 MPa )に保たれる。また,プレッシャ・リミッタは,異常高圧時に燃料を逃がし安全性を確保している。

(2)燃料の微粒化により着火性が良くなるため噴射タイミングを遅角させることができ,着火遅れや燃焼期間が長くなることにより燃焼温度が低くなるため,NOxの発生を低減できる。

不適切

ジーゼル・エンジンは,ガソリン・エンジンのようなノッキングを生じないため圧縮比を高くすることができる。さらに,吸気の絞りを行う必要がないため,ほとんどの領域で空気過剰の希薄燃焼になる。空気が多く希薄燃焼になるため,排気温度も低くエンジンの耐久性もあり, CO (一酸化炭素) , HC (炭化水素)の発生も極めて少ない。しかし,排気ガス中に O2 (酸素)が多く存在するので,ガソリン・エンジンに使用されている三元触媒が,多量の O2 による触媒の効率低下のために使えない。そのため NOx (窒素酸化物)の低減が難しい。また,ジーゼル・エンジンは,一種の層状燃焼であり,燃焼は燃料噴射近傍のところで行われ,局部的空気不足を生じやすく, PM ( Particulate Matter :粒子状物質)(注参照)生成の問題を生ずる。

ジーゼル・エンジンでは,特に,排気ガス中に合まれる有害な大気汚染物質となる PM , NOx をそれぞれ低減させることが最も重要になってくる。 PM は,完全燃焼させることで低減させることができるが, NOx は,完全燃焼すると燃焼ガス温度が高くなるため,より多く生成される。この PM と NOx は,同時に両者を低減することは,困難な関係にある。

この問題を解決するためには,コモン・レール式高圧燃料噴射システムのように噴射圧力を高圧化することで液体の燃料を微粒化させ,微粒化したことで総表面積が大きくなり周囲の吸入空気や熱とよく触れることになり,良い燃焼状態になり PM の発生が低減する。さらに,微粒化したことで着火性が良くなるため噴射タイミングを遅角させることができ,着火遅れや燃焼期間が短くなることにより燃焼温度が低くなるため,NOx の生成も低減できる。

 

 

(3)メイン噴射の前に補助的なパイロット噴射を行うことにより,メインの燃焼が緩やかに開始するため,エンジンの振動及び騒音を低減できる。

適切

特徴

(1)従来の電子制御式分配型インジェクション・ポンプでは,インジェクション・ノズルの最大噴射圧力はエンジン回転速度や負荷の影響を受け,全回転域に渡って良好な噴射圧力を得ることが難しかったが,コモン・レール式高圧燃料噴射システムでは,高圧燃料をコモン・レールに蓄えることで,常に安定した噴射圧力を確保できるためエンジン性能が向上する。

(2)コモン・レールと電磁式インジェクタを使用することにより,インジェクタ内の燃料に常に高い圧力が掛かっているため,電子制御式分配型インジェクション・ポンプに比べ,噴射量及び噴射時期をエンジンECUでより精密に制御できる。

(3)燃料噴射を2段階に分割し,メイン噴射の前に補助的なパイロット噴射を行うことによりメインの燃焼が緩やかに開始するため,エンジンの振動及び騒音を低減できる。さらに,噴射時期を最適に制御することにより燃料の拡散を促進し,燃焼温度が低く抑えられるため,黒煙及びNOXの排出量を低減することができる。また,この噴射システムでは,燃焼速度を速めることができるため,良好な燃焼を確保できる。

 

 

(4)高圧燃料系の接続部を締め付ける場合は,燃料漏れを防止するため,基準値を超えた値で行うべきである。

不適切

コモン・レール式高圧燃料噴射システム整備上の全般的な注意事項

(1)コモン・レール式高圧燃料噴射システムは精密部品で構成されており,また,非常に高圧の燃料(20~135MPa)を扱うため,異物に対して特に注意が必要となる。整備時には以下の項目に注意すること。

・分解前に周辺の泥,さびなどを洗浄除去し,分解時に燃料系内部に混入しないようにする。

・部品保管時に異物の混入,シール面などに傷を付けない。

・組み付け前には各部品を十分に洗浄し,シール面にごみ,切粉などの異物が付着しないように注意

して組み付ける。

(2)高圧燃料系(サプライ・ポンプ~インジェクタ~リターン間)の締め付けトルクは,必ず,修理書に記載してある基準値を守ること基準値以上でも,以下でも燃料漏れを起こす恐れがある。

(3)燃料系の作業後(含むガス欠工ンスト時)は,配管内のエア抜きを行うこと。(通常のエンジンよりもエアが抜けにくくなっている。)

エア抜きは,フューエル・フィルタの手押しポンプの抵抗が大きくなるまで押して行う。行わない場合は,30秒程度のクランキングが必要となる。

 

 

よって答えは3