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令和6年3月実施1級小型問題24:インクリメンタル・エンコーダ式のスロットル・ポジション・センサ回路の異常検知範囲

24

前進4段のロックアップ機構付き電子制御式ATの電子制御式スロットル装置などに用いられている,図のインクリメンタル・エンコーダ式のスロットル・ポジション・センサ回路の異常検知範囲を示したものとして,適切なものは(1)から(4)のうちどれか。

解く

 

よって答えは1

 

参考

ス口ットル・ポジション・センサ

 スロットル・ポジション・センサは,スロットル・バルブの開度を検出するセンサで,構造は,ポテンショ・メータ式のものと,ロータリ・エンコーダ式のものとがある。

 ロータリ・エンコーダ式は,光学素子式,磁気抵抗素子式,ホール素子式などがある。

 ロータリ・エンコーダ式の光学素子式のものでは,図のような光学素子式のインクリメンタル・エンコーダ式と

図のようなアブソリュート・エンコーダ式とがある。

インクリメンタル・エンコーダ式は,回転角度の変化分に対してパルスを出力する相対値検出のため,イグニション・スイッチOFF⇒ONに電源が入る場合には,基準点への復帰が必要になる。

これに比べてアブソリュート・エンコーダ式は回転角度の絶対値がパルス出力されるため,イグニション・スイッチOFF⇒ONに電源が入る場合にも基準点への復帰は不要となる。

自動車では,構造が比較的簡単なインクリメンタル・エンコーダ式が多く採用されている。ここでは,電子制御式スロットル装置などで使用されているインクリメンタル・エンコーダ式のスロットル・ポジション・センサについて説明する。

スロットル・ポジション・センサは,スロットル・モータの軸に取り付けられ,スロットル・モータと同じ回転をしている。また,スロットル・モータは,スロットル・バルブが全閉位置(アイドル回転速度時)から全開位置になるまで,車種によって異なるが数回転する。

 スロットル・ポジション・センサは,図のようにロータには規則的な多数の光学的スリットを設け,発光ダイオードの光が固定スリットを通過してホト・ダイオードに当たり,その光を検出することで,スリットの位置を信号電圧に変換し,ロータが回転することで連続したパルスを得られる。

 図のスロットル・ポジション・センサは,ECUとは別の12V電源をもち,内蔵した5V安定化電源回路によりスロットルの角度位置を検出するセンサ回路と,これを出力する出力回路により構成されている。

 信号電圧を作るセンサの回路構成は,図に示すもので,センサ側の12V電源⇒5V安定化電源回路⇒ボデー・アースに電流を流す回路構成及び5V安定化電源回路⇒センサ回路⇒出力回路⇒ECUのアースに電流を流す回路構成とECUの5V安定化電源回路⇒抵抗(R)⇒センサ側出力回路のトランジスタ(以下,Trという。)⇒ECUのアースに電流を流す回路構成により信号電圧への増幅と変換を行って,センサ信号が作られ,入力回路を介してマイコンに入力される。

信号形態

 信号電圧は,ECU内5V安定化電源をもとに波形整形を行うため,ロータの回転が遅い(スロットル・バルブがゆっくり開く)場合には,図(1)の周波数を有し,回転が速くなる(スロットル・バルブが速く開く)と,図(2)のように周波数が高くなる。

ECUの入力回路では,信号電圧値が閾値を通過したとき,パルス数がカウントされ,回転数と速度が検出される。回転角度の検出は,ロータ1回転当たりのスリット数によって設定され,1周360度をスリット数で除した値が1パルス時の角度であり,スリット数が多いロータほど角度分解能が高くなる。

 スロットル・バルブの回転方向CW(Clockwise:時計回り,右回り:スロットル閉側⇒開側),CCW(counter Clockwise:反時計回り,左回り:スロットル開側⇒閉側)を判別するために,図(1)に示すようにAスリットを通過した信号電圧をA相,Bスリットを通過した信号電圧をB相とし,二つの位相関係を変えることによりA相,B相の電圧の立ち上がり順序又は立ち下がり順序でCW又はCCWを判別する。

また,図(2)に示すようにゼロ・スリットを通過した信号電圧を2相として回転の基点を検出している。

ここで説明しているスロットル・ポジション・センサの信号形態は,周波数形態になるが,スロットル・モータの回転数及びロータのスリット数で,スロットル・バルブ全閉位置(アイドリング時)から全開位置までの最大パルス数(信号電圧)が決まることと,スロットル・バルブの角度をリニア的に検出しているため,ここでは,リニア信号センサとして説明する。

異常検知

異常検知の範囲

 

 マイコンは,A相,B相の信号電圧の組み合わせでCW,CCWを判別しているため,どちらかの相の信号電圧が一定になった場合や両方の相の信号電圧が一定になった場合などに異常検知を行う。

 マイコンが異常検知する仕組みは,図(1)に示すようにマイコン閾値と検出信号電圧の比較が行われ,マイコンは,図(2)に示すように信号電圧が上限値の閾値をアップ・エッジ及び,下限値の閾値をダウン・エッジして固定したときに異常検知を行う。

また,作動中ではセンサの機能低下(特性異常)や入力回路の信号電圧に異常(接触抵抗の増大)が発生し,プログラムのマップ・データと検出信号が一致しない場合でも,この信号電圧値が異常検知不可範囲の電圧値に入っていれば,マイコンは異常検知しない。

 高精度の異常検知を必要とするものは,図のように作動中においてソフトウエアの使用により,複数の信号線の組み合わせを想定して,プログラムのマップ・データと検出信号の比較が行われ,機構,機能上存在しない値(データ値)になったときに異常検知を行うものもある。

異常検知の回路

① 図1一64のの部分の回路において,ECU内部,信号線,センサ電源線,センサ内部,信号アース線,センサ・アース線のいずれかに断線がある場合には,センサ側の12V電源⇒5V安定化電源回路つ⇒ボデー・アースに電流を流す回路構成及び5V安定化電源回路⇒センサ回路⇒出力回路⇒ECUのアースに電流を流す回路構成とECUの5V安定化電源回路⇒抵抗(Rx)⇒出力回路のTr⇒ECUのアースに電流を流す回路構成ではなくなるため,入力回路には,5V安定化電源回路から抵抗を経由した電圧が入力され,マイコンは上限値の閾値をアップ・エッジする5Vの信号電圧を検出して異常検知を行う。

② 図のの部分の回路において,ECU内部に断線がある場合には,ECUの5V安定化電源回路⇒抵抗(Rx)⇒出力回路のTr⇒りECUのアースに電流を流す回路構成ではなくなるため,入力回路には,信号電圧0Vが入力され,マイコンは,下限値の閾値をダウン・エッジする0Vの信号電圧を検出して異常検知を行う。

③ 図の■■■■の部分のように,ECU内部,信号線及びセンサ内部に短絡がある場合には,入力回路には,信号電圧0Vが入力され,マイコンは,下限値の閾値をダウン・エッジする0Vの信号電圧を検出して異常検知を行う。