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図1に示すパラレル・シリーズ・ハイブリッド・システムの車両で,図2の動力分割機構のプラネタリ・ギヤの共線図(1)~(4)のうち,主にエンジンの出力で定常走行している状態から加速した状態を表しているものとして,適切なものは図2の(1)~(4)のうちどれか。ただし,動力分割機構にはプラネタリ・ギヤを利用しており,インターナル・ギヤはモータ及び駆動輪に,サン・ギヤはジェネレータに,プラネタリ・キャリヤはエンジンにそれぞれ直結または連結されている。
解く
よって答えは(4)
動力分割機構及びギヤ・トレーン(歯車列)
動力分割機構及びギヤ・トレーンは,図 ( 1 ) , ( 2 )のようにプラネタリ・ギヤを利用してエンジン動力を,モータ及び駆動輪とジェネレータに分割しており,インターナル・ギヤはモータ及び駆動輪に,サン・ギヤはジェネレータに,プラネタリ・キャリヤはエンジンにそれぞれ直結又は連結されている。
( a )プラネタリ・ギヤの作動
プラネタリ・ギヤを構成する 3 要素の回転方向,回転速度及び力の釣り合いを表現するために,共線図を用いて作動を説明する。
共線図では, 3 本の縦軸の間隔がギヤ比を示し,縦軸の高さが回転速度を示している。また,共線図上では,3 要素の回転速度が必ず直線で結ばれる関係となる。
- エンジン停止時
イグニション・スイッチ OFF 時,又は,停車時において,エンジン暖機後,エアコン・コンプレッサがOFFで HV バッテリの充電状態が良好な場合は,エンジンが停止している。
このとき,モータとジェネレータも停止しているため,図 のような共線図になる。
2エンジン始動時
停車状態でエンジンを始動するときは,図 のような共線図になる。このときは,駆動輪が止まっているためインターナル・ギヤは停止している。この状態からエンジンのスタータ機能を持つジェネレータに通電し,サン・ギヤを回転させエンジンを始動させる。エンジンが始動すると,ジェネレータは発電を開始し,その電力は HV バッテリの充電及びモータに供給され,走行に使用される。
3モータ走行時
モータのみで走行しているとき(後退時も同様)はエンジンが停止しているため,図 のような共線図になる。
このとき,ジェネレータは発電せず空転することになり,モータは HV バッテリから供給される電カで駆動輪を駆動する。
4定常走行時
定常走行時は,主にエンジンの出力で走行するが,燃費の良いエンジン回転速度になるようにジェネレータの回転速度(発電量)を制御している。例えば,図 の共線図に示すようにインターナル・ギヤの回転速度(車速)が同じであっても,ジェネレータの回転速度を変えることによりエンジンの回転速度を変化させることができるためジェネレータの回転速度(発電量)を調整して目標エンジン回転速度になるように制御している。
5加速時
定常走行から加速する場合は,図 の共線図に示すようにエンジンの回転速度を上げ,出力を増加させると同時にジェネレータの発電量も増加させ,その電力を使用したモータの駆動力を加えて加速する。
以上のように,ハイブリッド用トランスアクスルはジェネレータを用いて,エンジン回転速度を無段階に制御無段変速機としての機能を果たしている。
なお,車両の前進,後退はモータの回転方向をシフト・ポジション・センサの信号により制御する方式であるが, P レンジでは車軸の動きを機械的に固定している。