〔NO. 1〕
ジーゼル・エンジンの性能などに用いられている用語に関する記述として、不適切なものは次のうちどれか。
(1)正味仕事率とは、エンジンのクランクシャフトから実際に得られる動力をいう。
(2)グロス軸出力とは、エンジンの運転に必要な付属装置だけを装着してエンジン試験台で測定した軸出力である。
(3)図示熱効率とは、シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと、供給した熱量との割合をいう。
(4)ジーゼル・エンジンの空気過剰率は、低速で負荷が小さく噴射量が少ないときは1.2 ~ 1.4程度で、負荷が大きく最大噴射量に達したときは2.5以上である。
解く
(1)正味仕事率とは、エンジンのクランクシャフトから実際に得られる動力をいう。
適切
◎正味熱効率
一般に,内燃機関の熱効率のことを正味熱効率といい,これは正味仕事率から算出した仕事を熱量に換算したものと,動力を得るために使った燃料の総熱量との割合である。
なお,正味仕事率から算出した仕事は,図示仕事から運動部分の摩擦,ウォータ・ポンプ,ファン,オルタネータなどの補機装置を動かすのに必要な仕事を差し引いたものである。
実際に,エンジンのクランクシャフトから得られる動力を正味仕事率又は軸出力という。
(2)グロス軸出力とは、エンジンの運転に必要な付属装置だけを装着してエンジン試験台で測定した軸出力である。
適切
◎エンジンの出力試験
自動車用エンジンの出力試験方法は,JISに規定されており,エンジン全負荷状態におけるグロス軸出カ試験方法及びネット軸出力試験方法がある。
また,グロス軸出力は,エンジンの運転に必要な付属装置だけを装着してエンジン試験台で測定した軸出力であり,ネット軸出力は,エンジンを特定の用途に使用するのに必要な付属装置をすべて装着してエンジン試験台で測定した軸出力である。
なお,現在は,ネット軸出力試験方法が主流となっている。
(3)図示熱効率とは、シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと、供給した熱量との割合をいう。
適切
◎図示熱効率
図示熱効率とは,シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと,供給した熱量との割合をいう。
作動ガスがピストンに与えた仕事を図示仕事といい,その動力を図示仕事率という。図示仕事は指圧線図から求めることができるが,冷却損失,吸排気に要する仕事などのために理論仕事より小さい。したがって,図示熱効率は理論熱効率より常に小さい。
(4)ジーゼル・エンジンの空気過剰率は、低速で負荷が小さく噴射量が少ないときは1.2 ~ 1.4程度で、負荷が大きく最大噴射量に達したときは2.5以上である。
不適切
◎空気過剰率
燃料を完全燃焼させるためには,十分な酸素が必要であるが,空気中に含まれる酸素の量は決まっているので,エンジンの吸入行程において吸入された空気の質量により,燃やし得る燃料の最大量が決定される。例えば,軽油1kgを完全燃焼させるのに理論的に必要な空気の質量は約15kgである。
しかし,実際には燃焼が短時間に行われるため,理論上の必要空気量では完全燃焼は行われないので,それより多くの空気量が必要である。この過剰空気の割合を空気過剰率と呼び,次の公式で表される。

ジーゼル・エンジンでは,空気中に燃料を噴射してから短時間のうちに燃焼が起こるので,十分に燃料と空気を混合させることが難しい。したがって,空気過剰率は,全負荷(最大噴射量)時において1.2~1.4程度で,低速で負荷が小さい(噴射量が少ない)ときは,2.5以上になっている。
よって答えは(4)