〔No.5〕
NOXの低減策に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。
(1)インテーク・マニホールドの形状を改良して、各シリンダへの混合気配分の均質化を図る。
(2)エンジンの運転状況に対応する空燃比制御及び点火時期制御を的確に行うことで、最高燃焼ガス温度を上げる。
(3)燃焼室の形状を改良し、燃焼時間を長くすることにより最高燃焼ガス温度を下ける。
(4)EGR(排気ガス再循環)装置や可変バルブ機構を使って、不活性な排気ガスを一定量だけ吸気側に導入し最高燃焼ガス温度を下げる。
解く
(1)インテーク・マニホールドの形状を改良して、各シリンダへの混合気配分の均質化を図る。
不適切
CO、HCの低減策として共通していえることは、薄めの混合気を安定して燃やすことであり、その方法として次のような工夫が施されている。
・エンジンを電子制御することで、的確にエンジン回転速度及びインテーク・マニホールド圧力に対応する空燃比制御及び点火時期制御を行う。
・インテーク・マニホールドの形状を改良して、各シリンダへの混合気配分の均質化を図る。
・インテーク・マニホールド及び燃焼室の形状を改良し、吸入混合気に渦流など(筒内噴射式エンジンの一部には渦流を発生させないものもある。)を与えて燃料を燃えやすぐする。
・減速時に燃料の供給を停止する。
・バルブ・タイミングを変更して、オーバラップ時の未燃焼ガスの排出を防止する。
・点火装置を改良し失火を防止する。
・エキゾースト・マニホールド系統を改良して、排気ガス中の未燃焼ガスを燃えやすくする。
(2)エンジンの運転状況に対応する空燃比制御及び点火時期制御を的確に行うことで、最高燃焼ガス温度を上げる。
不適切
・エンジンを電子制御することで、的確にエンジンの運転状況に対応する空燃比制御及び点火時期制御を行うことで最高燃焼ガス温度を下げる。
(3)燃焼室の形状を改良し、燃焼時間を長くすることにより最高燃焼ガス温度を下ける。
不適切
・燃焼室の形状を改良し、混合気に渦流などを与えて燃焼速度を速め、燃焼時間を短かくすることにより最高燃焼ガス温度を低くする。
(4)EGR(排気ガス再循環)装置や可変バルブ機構を使って、不活性な排気ガスを一定量だけ吸気側に導入し最高燃焼ガス温度を下げる。
適切
・EGR(Exhaust Gas Recirculataion:排気ガス再循環)装置や可変バルブ機構を使って、不活性な排気ガスを一定量だけ吸気側に導入し最高燃焼ガス温度を下げる。
よって答えは(4)
NOxの低減
CO、HCの低減には、吸入された混合気を完全に燃焼させることが基本的な対策であるが、NOxについては、この考え方が当てはまらない。
NOxの発生は、図のように理論空燃比よりやや薄い空燃比領域で多く、燃焼効率が高いほど、つまり燃焼ガス温度が高いほど、特に、エンジン加速時
などに大量に発生する傾向がある。これは、CO、HCの発生を抑える原理とは逆であり、低減のための対応としては、一般的に次のような方法で対処している。
・エンジンを電子制御することで、的確にエンジンの運転状況に対応する空燃比制御及び点火時期制御を行うことで最高燃焼ガス温度を下げる。
・空燃比制御により理論空燃比付近の狭い領域に空燃比を制御し、理論空燃比領域で有効に作用する三元触媒を使って排気ガス中のNOxを還元する。
・EGR(Exhaust Gas Recirculataion:排気ガス再循環)装置や可変バルブ機構を使って、不活性な排気ガスを一定量だけ吸気側に導入し最高燃焼ガス温度を下げる。
・燃焼室の形状を改良し、混合気に渦流などを与えて燃焼速度を速め、燃焼時間を短かくすることにより最高燃焼ガス温度を低くする。
以上のように、排気ガス浄化の対応策として種々の方法がとられているが、各エンジンとも、排気量、圧縮比などの根本的な相違や、燃焼室形状、エンジンの電子制御による空燃比制御、点火時期制御などもそれぞれ異なっており、有害な大気汚染物質の発生傾向にも大きな差異がある。例えば、バルブ・タイミングをみても、そのオーバラップの大きさを変更することによって、HCを減少させるようにするか、反対に効果をねらってNOxを減少させるようにするか、それぞれのエンジンによって異なってくる。
いずれにしても、できるだけエンジンの性能を低下させることなく、そのエンジンに合った低減方法の組み合わせによって対応している。