26.CVT(スチール・ベルトを用いたベルト式無段変速機)に関する記述として、不適切なものは次のうちどれか。
(1)スチール・ベルトは、エレメントの伸張作用(エレメントの引っ張り)によって動力が伝達される。
(2)CVTは、プラネタリ・ギヤ・ユニット式ATより更にごみを嫌うので、点検時等にごみがユニット内に入り込まないように十分注意する必要がある。
(3)可動シーブは、油圧によりボール・スプラインの軸上をしゅう動し、プーリの溝幅を任意に可変できる仕組みになっている。
(4)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が高いときは、プライマリ・プーリの溝幅が狭くなるため、プライマリ・プーリに掛かるスチール・ベルトの接触半径は大きくなる。
解く
(1)スチール・ベルトは、エレメントの伸張作用(エレメントの引っ張り)によって動力が伝達される。
スチール・ベルト
スチール・ベルトは、図に示すように、多数のエレメントと多層のスチール・リング2本で構成されている。このスチール・ベルトの特徴は、一般のゴム・ベルトなどが引っ張り作用で動力を伝達するのに対して、エレメントの圧縮作用(エレメントの押し出し)によって動力が伝達されることである。

エレメントが圧縮作用により動力伝達を行うには、プーリの傾斜面との間に摩擦力が必要となる。摩擦力はプーリが油圧によりエレメントを挟み込むことでエレメントがプーリの傾斜面外側に押し出される力を、スチール・リングが張力で受け止めることにより発生する。
すなわち、圧縮作用により動力伝達を行うエレメントと、それに必要な摩擦力を維持するスチール・リングとが役割を分担している。
(2)CVTは、プラネタリ・ギヤ・ユニット式ATより更にごみを嫌うので、点検時等にごみがユニット内に入り込まないように十分注意する必要がある。
CVTが不具合現象を発生したときの着目点は、全般的には、ATの項で説明した内容に準じるが、CVTとして特徴的なのは、CVT専用のフルードを使用しないとベルトの滑りなどの故障の原因となるため、CVTが不具合を起こしたときには、フルードが自動車メーカ指定のものかフルードの色や整備記録で確認することも大切である。また、CVTはATより更にごみを嫌うので、点検時にごみがユニット内に入り込まないように十分注意する必要がある。
(3)可動シーブは、油圧によりボール・スプラインの軸上をしゅう動し、プーリの溝幅を任意に可変できる仕組みになっている。
プライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリ
プライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリは、図に示すように、それぞれ傾斜面をもつシャフト(固定シープ面)と可動シープ(軸方向に移動可能な可動シープ面)及び可動シープ背面に油圧室(ピストン)が設けられており、油圧室に掛ける油圧を制御することで、可動シープがボール・スプラインの軸上をしゅう動し、プーリの溝幅を任意に可変できる仕組みになっている。プライマリ・プーリではプーリ比(変速比)を制御し、セカンダリ・プーリでは動力伝達に必要なスチール・ベルトの張力を制御することで、走行状態に応じた無段階の変速を可能としている。

(4)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が高いときは、プライマリ・プーリの溝幅が狭くなるため、プライマリ・プーリに掛かるスチール・ベルトの接触半径は大きくなる。
変速作動による変速比
AT・ECUはアクセル・ペダル踏み込み角度、エンジン回転速度及び車速の信号により、車両の走行状態を検出し、これに適したプーリ比となるようにプライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリの油圧室に掛かる作動油圧を制御している。
なお、プーリ比は、入力軸回転速度(プライマリ回転速度)と出力軸回転速度(セカンダリ回転速度)により算出(プーリ比=セカンダリ回転速度/プライマリ回転速度)している。また、プライマリ・プーリとスチール・ベルトの接触半径をr1、セカンダリ・プーリとスチール・ベルトの接触半径をr2とすると、プーリ比はr2/r1で表すことができる。
プーリ比が大きい(Low側)ときは、図(1)のようにプライマリ・プーリの溝幅が広いため、スチール・ベルトの接触半径は小さくな。ている。逆にプーリ比が小さい(High側)ときは、図(2)のようにプライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧を高めて溝幅を狭くすることでスチール・ベルトの接触半径を大きくしている。これに対し、セカンダリ側はプライマリ側の作動に合わせて油圧室に掛かる油圧を制御し、スチール・ベルトの張力を制御している。

よって答えは(1)