11.筒内噴射式ガソリン・エンジンに関する記述として、適切なものは次のうちどれか。
(1)低負荷時は吸入行程後期の高圧雰囲気下で噴射された燃料が、コンパクトな球状噴霧を形成し気流制御との相乗効果でシリンダ内に拡散することなくスパーク・プラグ近傍に導かれる。
(2)高負荷時は圧縮行程前期の大気圧以下の雰囲気下に燃料を噴射し、燃料の気化熱を吸入空気の冷却に用いて体積効率を上げることにより理論空燃比近くで均質燃焼を行い高出力を得ている。
(3)低負荷運転領域の場合、成層燃焼を行うため空気過剰状態となりポンプ損失が増大することで、ジーゼル・エンジン並みの熱効率が可能となる。
(4)高負荷運転領域の場合、均質燃焼を行うが、直接、シリンダ内に燃料を噴射するため、燃料の気化潜熱により燃焼室内の空気温度を下げて空気密度を上げることでインテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジン以上の高出力が得られる。
解く
(1)低負荷時は吸入行程後期の高圧雰囲気下で噴射された燃料が、コンパクトな球状噴霧を形成し気流制御との相乗効果でシリンダ内に拡散することなくスパーク・プラグ近傍に導かれる。
低負荷時(成層燃焼)
低負荷時には,成層燃焼を行うために,圧縮行程後期の高圧雰囲気下で,高圧スワール・インジェクタより燃料を噴射する。噴射された燃料は,コンパクトな球状噴霧を形成し,シリンダ内の気流制御との相乗効果で,図 のようにシリンダ内に拡散することなくスパーク・プラグ近傍に導かれ,成層燃焼(空燃比: 25 ~ 55 程度)を行う。

よって(1)は不適切
(2)高負荷時は圧縮行程前期の大気圧以下の雰囲気下に燃料を噴射し、燃料の気化熱を吸入空気の冷却に用いて体積効率を上げることにより理論空燃比近くで均質燃焼を行い高出力を得ている。
高負荷時(均質燃焼)
高負荷時には,中負荷時と同様に,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下に燃料を噴射し,燃料の気化熱を吸入空気の冷却に利用して体積効率を上げ,理論空燃比近く(空燃比: 12 ~ 15 程度)で均質燃焼を行い,高出力を得ている。
よって(2)は不適切
(3)低負荷運転領域の場合、成層燃焼を行うため空気過剰状態となりポンプ損失が増大することで、ジーゼル・エンジン並みの熱効率が可能となる。
よって(3)は不適切
(4)高負荷運転領域の場合、均質燃焼を行うが、直接、シリンダ内に燃料を噴射するため、燃料の気化潜熱により燃焼室内の空気温度を下げて空気密度を上げることでインテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジン以上の高出力が得られる。
筒内噴射式ガソリン・エンジンにおける燃焼
筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,低負荷運転領域の場合,成層燃焼を行うため,着火可能な混合気の層を,図 ( 1 )のようにスパーク・プラグ付近に作り出し,それ以外の部分には空気が充てんされており,燃焼室全体でみると,超希薄な空燃比でも,安定した燃焼を行うことができる。このことが筒内噴射式エンジンの大きな目的の一つである。
これにより,空気過剰状態でも燃焼が可能となるので,低負荷域でも吸入空気量をあまり絞らない状態で運転が可能となる。したがって,ポンプ損失が低減されるため,ジーゼル・エンジン並の熱効率が可能となる。この考え方は,古くから知られ研究されてきたが,その多くはスパーク・プラグ付近に燃料を噴射して,燃料が拡散する前に点火する方式であった。しかし,この方式では,燃料の気化が十分にできないため,スパーク・プラグに液体の燃料が付着し,また,周辺の混合気が濃過ぎるため,プラグがくすぶるなどの問題が生じて,実用化には至らなかった。
したがって,近年実用化された筒内噴射式エンジンでは,燃焼室内の気流制御と圧縮行程での燃料噴射制御により,点火直前にピストンに向かって噴射した燃料を筒内の空気流動に乗せ,気化させながらスパーク・プラグ点火部に運ぶことで成層燃焼が行われている。
高負荷運転領域の場合は,インテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジンと同様に,図( 2 )のように均質燃焼を行うが,直接,シリンダ内に燃料を噴射するため,燃料の気化潜熱(潜熱とは、固定、液体、気体と変化するときに吸収・放出する熱エネルギーのこと)により燃焼室内の空気温度を下げて空気密度を上げるので,インテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジン以上の高出力が得られる。
なお,成層燃焼と均質燃焼の中間域では,均質リーン燃焼(インテーク・ポート噴射エンジンでの希薄燃焼相当)を行い,燃費向上と燃焼切り替え時のトルク変化をスムーズにしている。

よって(4)は適切
よって答えは(4)