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軽油(燃料)に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1) セタン価が低い(小さい)ほど,低温での始動性が良い。
(2) 冬季寒冷地用の軽油は,一般に使用されている軽油に比べて流動点が低い。
(3) セタン価が高い(大きい)ほど,揮発性が高い。
(4) 軽油は,燃料装置の潤滑や排気ガス後処理装置の浄化効率を高めるため,硫黄分を多くする必要がある。
解く
(1) セタン価が低い(小さい)ほど,低温での始動性が良い。
不適切
セタン価
軽油の着火性を示す尺度として,セタン価又はセタン指数が用いられ,着火性の良いものほどこの数値は大きくなる。現在市販されている軽油(2号)のセタン価は50~55程度である。
セタン価は,着火性のよいセタンと着火性の悪いヘプタメチルノナンの混合による標準燃料と試料燃料の着火性を比較し,試料燃料と同一の着火性を示す標準燃料中のセタンとへプタメチルノナンの容量(%)から計算によって求められる。
低温始動性
ジーゼル・エンジンの始動性で問題になるのは,エンジン(燃焼室)が低温時の場合が多い。低温時の始動性に大きな関係をもつ軽油の性質は,セタン価及び揮発性である。
低温時において,軽油が容易に着火するためには,セタン価の高いことが必要になるが,一方,低温で短時間に燃えやすい混合気をつくるためには,揮発性の高いことが必要になる。しかし,一般に軽油のセタン価と揮発性は逆の関係をもち,セタン価が高くなるほど揮発性は低くなる。
したがって,このような相反する性質を適度に満足させる必要がある。なお,セタン価と揮発性を比較した場合には,どちらかといえば,セタン価の方が低温始動性に及ぼす影響は大きい。
(2) 冬季寒冷地用の軽油は,一般に使用されている軽油に比べて流動点が低い。
適切
低温流動性
一般に使用されている軽油には,僅かではあるが,ろう(ワックス)分が含まれているので,軽油の温度が低下してろう(ワックス)分の結品が成長すると,フィルタが目詰まりを起こし,軽油がポンプまで送られなくなったり,軽油の流量が低下したりして,エンジン停止や回転速度の低下を生じる。
我が国では,軽油の低温における流動性を表す指標として,JIS規格で定められている流動点を採用している。
流動点は,軽油を45℃に加熱したあと,軽油をかき混ぜないで規定の方法で冷却したときに流動する最低の温度のことをいい,0℃を基点とし2.5℃の整数倍で表される。
なお.寒冷地で使用される軽油(3号又は特3号)は,一般に使用されている軽油(2号)に比べて流動点が低くなっている。
(3) セタン価が高い(大きい)ほど,揮発性が高い。
不適切
一般に軽油のセタン価と揮発性は逆の関係をもち,セタン価が高くなるほど揮発性は低くなる。
(4) 軽油は,燃料装置の潤滑や排気ガス後処理装置の浄化効率を高めるため,硫黄分を多くする必要がある。
不適切
硫黄分
近年の自動車には,排出ガス規制に対応するための排気ガス後処理装置(触媒,DPF,尿素SCRなど)か採用されている。これらの装置は,軽油に含まれる硫黄分によって浄化効率が低下するため,1992年から軽油の低硫黄化が徐々に進められ,2007年からは硫黄分10ppm(0.0010質量%)以下となっている。
なお.軽油の硫黄分は,燃料装置の潤滑に必要となるため,低硫黄化された軽油には硫黄分の代わりに潤滑剤が添加されている。
よって答えは(2)