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ジーゼル・エンジンの性能の用語に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1) 体積効率と充填効率は,平地ではほとんど同じであるが,高山などの気圧の低い場所では差を生じる。
(2) 図示熱効率とは,シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと,供給した熱量との割合であり,理論熱効率よりその値は低い。
(3) 機械損失は,ピストンなどの摩擦損失やウォータ・ポンプなどの補機駆動の損失からなっており,冷却水の温度の影響は受けない。
(4) ジーゼル・エンジンの空気過剰率は,全負荷(最大噴射量)時において1.2~1.4程度で,負荷が小さい (噴射量が少ない)ときは2.5以上である。
解く
(1) 体積効率と充填効率は,平地ではほとんど同じであるが,高山などの気圧の低い場所では差を生じる。
適切
5)体積効率と充填効率
空気の吸入状況の良否を比較する尺度として,体積効率と充瞋効率とがある。
測定時の外気の温度をT,圧力をPとし標準状態の外気の温度をT0,圧力をP0とすれば,
体積効率と充填効率は,平地ではほとんど同じであるが,高山など気圧の低い場所では差を生じる。
ジーゼル・エンジンの体積効率は,一般に0.9程度である。
エンジンの出力は,サイクルごとに吸入する空気の量に比例するので,限られた行程容積でより大きな出力を得るには,吸気系統を改良して体積効率を高めたり,過給機を用いて,充填効率を高める必要がある。
(2) 図示熱効率とは,シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと,供給した熱量との割合であり,理論熱効率よりその値は低い。
適切
理論熱効率
理論熱効率とは,理論サイクルにおいて仕事に変えることのできる熱量と,供給する熱量との割合をいう。
図示熱効率
図示熱効率とは,シリンダ内の作動ガスがピストンに与えた仕事を熱量に換算したものと,供給した熱量との割合をいう。
作動ガスがピストンに与えた仕事を図示仕事といい,その動力を図示仕事率という。図示仕事は指圧線図から求めることができるが,冷却損失,吸排気に要する仕事などのために理論仕事より小さい。したがって,図示熱効率は理論熱効率より常に小さい。
正味熱効率
一般に,内燃機関の熱効率のことを正味熱効率といい,これは正味仕事率から算出した仕事を熱量に換算したものと,動力を得るために使った燃料の総熱量との割合である。
なお,正味仕事率から算出した仕事は,図示仕事から運動部分の摩擦,ウォータ・ポンプ,ファン,オルタネータなどの補機装置を動かすのに必要な仕事を差し引いたものである。
実際に,エンジンのクランクシャフトから得られる動力を正味仕事率又は軸出力という。
正味熱効率を式で表すと,次のようになる。
(3) 機械損失は,ピストンなどの摩擦損失やウォータ・ポンプなどの補機駆動の損失からなっており,冷却水の温度の影響は受けない。
不適切
エンジンの諸損失
燃料の燃焼により発生した発熱量が,軸出力として有効仕事に変わるまでには,次のような諸損失がある。
(1)熱損失
熱損失とは,燃焼ガスの熱量が冷却水や冷却空気などによって失われることをいい,燃焼室壁を通して冷却水へ失われる冷却損失,排気ガスにもち去られる排気損失ふく射熱として周囲に放散されるふく射損失からなっている。
(2)機械損失
機械損失は,ピストン,ピストン・リング,各べアリングなどの摩擦損失と,ウォータ・ポンプ,オイル・ポンプ,ファン,サプライ・ポンプ,オルタネータ,エア・コンプレッサなど補機駆動の損失からなっている。機械損失は,冷却水の温度,潤滑油の粘度のほかに回転速度の影響が大きい。
(3)ポンプ損失
ポンプ損失とは,燃焼ガスの排出及び空気を吸入するための動力損失をいう。
(4) ジーゼル・エンジンの空気過剰率は,全負荷(最大噴射量)時において1.2~1.4程度で,負荷が小さい (噴射量が少ない)ときは2.5以上である。
適切
空気過剰率
燃料を完全燃焼させるためには,十分な酸素が必要であるが,空気中に含まれる酸素の量は決まっているので,エンジンの吸入行程において吸入された空気の質量により,燃やし得る燃料の最大量が決定される。例えば,軽油1kgを完全燃焼させるのに理論的に必要な空気の質量は約15kgである。
しかし,実際には燃焼が短時間に行われるため,理論上の必要空気量では完全燃焼は行われないので,それより多くの空気量が必要である。この過剰空気の割合を空気過剰率と呼び,次の公式で表される。
ジーゼル・エンジンでは,空気中に燃料を噴射してから短時間のうちに燃焼が起こるので,十分に燃料と空気を混合させることが難しい。したがって,空気過剰率は,全負荷(最大噴射量)時において1.2~1.4程度で,低速で負荷が小さい(噴射量が少ない)ときは,2.5以上になっている。
よって答えは(3)