35
軽油(燃料)に関する記述として、不適切なものは次のうちどれか。
(1)軽油(2号)のセタン価は、一般に50~55程度である。
(2)軽油の種類・品質は、JIS規格に決められており、一般には2号が用いられ、寒冷地では3号又は特3号が用いられている。
(3)セタン価の大きいものほど着火性が良く、着火性の悪い軽油を使用するとジーゼル・ノックを発生し騒音の原因となる。
(4)燃料装置の耐久性と噴霧の形成には、軽油の粘度が重要であり、粘度が高いほど油粒の直径が小さくなり、微細化、分散・分布は良くなるが、貫通力は悪くなる。
解く
(1)軽油(2号)のセタン価は、一般に50~55程度である。
適切
(2)軽油の種類・品質は、JIS規格に決められており、一般には2号が用いられ、寒冷地では3号又は特3号が用いられている。
適切
(3)セタン価の大きいものほど着火性が良く、着火性の悪い軽油を使用するとジーゼル・ノックを発生し騒音の原因となる。
適切
(4)燃料装置の耐久性と噴霧の形成には、軽油の粘度が重要であり、粘度が高いほど油粒の直径が小さくなり、微細化、分散・分布は良くなるが、貫通力は悪くなる。
不適切
よって答えは(4)
軽油の性質
軽油は,原油を蒸留する際に,ガス,ガソリン,灯油に続いて留出してくるもので,その成分は炭化水素の混合物で,やや黄色味を帯びており,適当な粘度をもっている。
軽油の種類・品質は,JIS規格に決められており,一般には2号が用いられ,寒冷地では3号又は特3号が用いられている。
軽油に要求される性状には,次のようなものがある。
(1)着火性
ジーゼル・エンジンは,自己着火により燃焼を行うので,着火性の良否が重要である。
着火性とは,燃料が高温に達すると,外部から火を近付けなくても自然に着火する性質のことである。
着火性の悪い軽油を使用すると,着火遅れ期間中に大量の可燃混合気がつくられ,一時に爆発的に燃焼するため,圧力が急激に上昇して,ジーゼル・ノックを発生し騒音の原因となる。
(2)セタン価
軽油の着火性を示す尺度として,セタン価又はセタン指数が用いられ,着火性の良いものほどこの数値は大きくなる。現在市販されている軽油(2号)のセタン価は50~55程度である。
セタン価は,着火性のよいセタンと着火性の悪いヘプタメチルノナンの混合による標準燃料と試料燃料の着火性を比較し,試料燃料と同一の着火性を示す標準燃料中のセタンとへプタメチルノナンの容量(%)から計算によって求められる。
(3)粘度
粘度は,燃料装置の耐久性と噴霧の形成に重要なものである。
燃料装置のしゅう動部分は,軽油によって潤滑されているので,粘度の低い軽油を使用した場合,潤滑不良により摩耗や焼き付きを生じる恐れがある。
また,噴霧の形成には,微細化,貫通カ,分散・分布の要件を備える必要がある。粘度が低いと,油粒の直径が小さくなり,微細化及び分散・分布は良くなるが貫通力は悪くなる。逆に,粘度が高いと,油粒の直径が大きくなり,貫通力は良くなるが微細化及び分散・分布は悪くなる。
以上のような相互関係があるため,効率の良い燃焼を行うためには,この相反する要求を適度に満足させる粘度特性をもつ必要がある。
(4)低温始動性
ジーゼル・エンジンの始動性で問題になるのは,エンジン(燃焼室)が低温時の場合が多い。低温時の始動性に大きな関係をもつ軽油の性質は,セタン価及び揮発性である。
低温時において,軽油が容易に着火するためには,セタン価の高いことが必要になるが,一方,低温で短時間に燃えやすい混合気をつくるためには,揮発性の高いことが必要になる。しかし,一般に軽油のセタン価と揮発性は逆の関係をもち,セタン価が高くなるほど揮発性は低くなる。
したがって,このような相反する性質を適度に満足させる必要がある。なお,セタン価と揮発性を比較した場合には,どちらかといえば,セタン価の方が低温始動性に及ぼす影響は大きい。
(5)低温流動性
一般に使用されている軽油には,僅かではあるが,ろう(ワックス)分が含まれているので,軽油の温度が低下してろう(ワックス)分の結品が成長すると,フィルタが目詰まりを起こし,軽油がポンプまで送られなくなったり,軽油の流量が低下したりして,エンジン停止や回転速度の低下を生じる。
我が国では,軽油の低温における流動性を表す指標として,JIS規格で定められている流動点を採用している。