29
ブレーキ装置に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。
(1)ブレーキは、自動車の運動エネルギを熱エネルギに変えて制動する装置である。
(2)ブレーキ液の沸点は、ブレーキ液に含まれる水分の量に大きく左右され、水分量が多いほど上昇する。
(3)ドラム・ブレーキは、ディスク・ブレーキに比べて放熱効果がよいので、フェードしにくい。
(4)制動距離とは、空走距離と停止距離をあわせたものをいう。
解く
(1)ブレーキは、自動車の運動エネルギを熱エネルギに変えて制動する装置である。
適切
ブレーキ装置
ブレーキ装置は、走行中の自動車を減速又は停止させる、あるいは、自動車の停止状態を保つために用いる装置である。
エンジンが、駆動力を得るために熱エネルギを運動エネルギに変える装置であるのに対し、ブレーキは、自動車の運動ネルギを熱エネルギに変える装置である。分類すると摩擦を利用する摩擦ブレーキ、排気抵抗を利用するエキゾースト・ブレーキなどのエンジン・ブレーキ及び渦電流発生装置を利用して減速力を得る電磁式リターダなどに分けられる。
なお、近年においては、先進安全自動車(ASV)が増加しており、衝突被害軽減ブレーキ(PCS:Pre Crush Safety)(注1参照)や車両安定制御システム(VSC:vehicle stability controlsystem)(注2参照)などのプレーキ関連の安全装備が急速に普及している。
(注1)衝突被害軽減ブレーキとは、前方の障害物をセンサなどで検出し、衝突の可能性の高さによって警報を出力したり、自動的にブレーキを作動させ、衝突の被害を軽減することを目的としたものである。
(注2)車両安定制御システムとは、前後左右のブレーキを独立して制御することにより、コーナリング中における車両の姿勢を安定した状態に保つことを目的としたものである。
(2)ブレーキ液の沸点は、ブレーキ液に含まれる水分の量に大きく左右され、水分量が多いほど上昇する。
不適切
べーパ・ロック現象
降坂時の連続的制動や連続走行して停止後の放置状態では、風による冷却効果が小さいため、ブレーキ液の温度が上昇する。ブレーキ液の温度が沸点を超えると、ブレーキ液が沸騰してブレーキの配管内及びホイール・シリンダなどに気泡が生じるため、規定の圧力を伝達できなくなり、ブレーキの効きが著しく悪くなる。この現象をベーパ・ロックという。
このべーパ・ロックを防ぐためには、降坂時のブレーキの連続使用や過度の使用を避けると共に、指定のブレーキ液を使用することが必要である。また、ブレーキ液の沸点は、ブレーキ液に含まれる水分の量に大きく左右され、水分が多いほど低下する。ブレーキ液は、月日が経つに連れて、含まれる水分量が多くなるため、ブレーキ液の性質を考慮すると、指定されている期間ごとに交換することが必要である。
(3)ドラム・ブレーキは、ディスク・ブレーキに比べて放熱効果がよいので、フェードしにくい。
不適切
プレーキを頻繁に用いると、ブレーキ・パッド又はブレーキ・ライニングが過熱して、材質が一時的に変化し、摩擦係数が下がるため、次第にブレーキの効きが悪くなる。また、ドラム・ブレーキの場合、過熱するとブレーキ・ドラムが僅かながら膨張して、ブレーキ・シューの当たりが悪くなることも効きが悪くなる原因の一つである。
このように、短時間内に繰り返し行う制動や、降坂時の連続的制動などの際に、過熱によりブレーキの効きが悪くなる現象をフェードという。
フェードを防ぐために、なるべく放熱効果がよくなるようにブレーキ・ディスクを中空にする、ブレーキ・ドラムの外側にフィンを設ける、ホイールのデザイン面に穴を開けて、通風をよくするなどの工夫が施してある。なお、ディスク・ブレーキは、ドラム・ブレーキに比べて放熱効果がよいのでフェードしにくい。
(4)制動距離とは、空走距離と停止距離をあわせたものをいう。
不適切
空走距離、制動距離、停止距離
図のように、運転者が危険を察知し制動動作を開始しても、実際にブレーキが作用するまでには時間が掛かってしまう。このうち、危険を察知してから制動動作を開始するまでを反応時間といい、制動動作を開始してから実際にブレーキが作用するまでを空走時間、車両が進む距離を空走距離という。また、運転者がブレーキを踏んでから停止するまでに車両が進む距離を制動距離といい、前述した空走距離とこの制動距離を合わせたものを停止距離という。
よって答えは(1)