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CVT(スチール・ベルトを用いたベルト式無段変速機)に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。
(1)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が低くなると、プライマリ・プーリの溝幅は広くなる。
(2)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が高くなると、プライマリ・プーリに掛かるスチール・べルトの接触半径は小さくなる。
(3)スチール・ベルトは、エレメントの伸張作用(エレメントの引っ張り)によって動力が伝達される。
(4)Lレンジ時は、変速領域をプーリ比の最High付近にのみ制限することで、強力な駆動力及びエンジン・ブレーキを確保する。
解く
(1)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が低くなると、プライマリ・プーリの溝幅は広くなる。
適切
(2)プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が高くなると、プライマリ・プーリに掛かるスチール・べルトの接触半径は小さくなる。
不適切
(3)スチール・ベルトは、エレメントの伸張作用(エレメントの引っ張り)によって動力が伝達される。
不適切
スチール・ベルト
スチール・ベルトは、図に示すように、多数のエレメントと多層のスチール・リング2本で構成されている。このスチール・ベルトの特徴は、一般のゴム・ベルトなどが引っ張り作用で動力を伝達するのに対して、エレメントの圧縮作用(エレメントの押し出し)によって動力が伝達されることである。
(4)Lレンジ時は、変速領域をプーリ比の最High付近にのみ制限することで、強力な駆動力及びエンジン・ブレーキを確保する。
不適切
変速作動による変速比
AT・ECUはアクセル・ペダル踏み込み角度、エンジン回転速度及び車速の信号により、車両の走行状態を検出し、これに適したプーリ比となるようにプライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリの油圧室に掛かる作動油圧を制御している。
なお、プーリ比は、入力軸回転速度(プライマリ回転速度)と出力軸回転速度(セカンダリ回転速度)により算出(プーリ比=セカンダリ回転速度/プライマリ回転速度)している。また、プライマリ・プーリとスチール・ベルトの接触半径をr1、セカンダリ・プーリとスチール・ベルトの接触半径をr2とすると、プーリ比はr2/r1で表すことができる。
プーリ比が大きい(Low側)ときは、図(1)のようにプライマリ・プーリの溝幅が広いため、スチール・ベルトの接触半径は小さくな。ている。逆にプーリ比が小さい(High側)ときは、図(2)のようにプライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧を高めて溝幅を狭くすることでスチール・ベルトの接触半径を大きくしている。これに対し、セカンダリ側はプライマリ側の作動に合わせて油圧室に掛かる油圧を制御し、スチール・ベルトの張力を制御している。
変速領域
CVTは、プーリ比を変更することで変速比を自由に設定できるので、変速点は、自動車メーカによって様々に設定されている。下記に示すのはその一例である。
なお、一部の車両にはCVTでありながら、あらかじめ設定されたプーリ比により、MTのように運転者が任意に変速が行えるマニュアル・モードを設定しているものもある。
(a)Dレンジ
Dレンジ時は、図(1)のようにプーリ比の最Lowから最Highまでの変速領域で変速を行う。
(b)Lレンジ
Lレンジ時は、図(2)のように変速領域をプーリ比の最Low付近にのみ制限することで強力な駆動力及びエンジン・ブレーキを確保する。
(c)Sモード
Sモード時は、図(3)のようにプーリ比のHigh側の変速領域を制限することにより、プーリ比が全体的にDレンジより高くなり常に大きめの駆動力及びエンジン・プレーキを発生させる。
よって答えは(1)