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コモン・レール式高圧燃料噴射システムの燃料噴射制御に関するECUの働きとして,不適切なものは次のうちどれか。
(1)エンジン回転速度や負荷の変化があっても噴射圧力が変動しないように,コモン・レール内の燃料圧力を常時一定に保つように制御している。 |
(2)クランク角センサ及び気筒判別センサからの信号で気筒判別を行い,気筒ごとに圧縮行程から膨張行程での間にパイロット噴射とメイン噴射の噴射信号を出している。 |
(3)各センサからの信号をもとに最適な噴射量及び噴射時期を計算し,EDU(エレクトロニック・ドライビング・ユニット)を介してインジェクタヘの通電時間及び通電時期を制御している。 |
(4)吸入空気温度が低いとき及び冷却水温が低いときには噴射量の増量補正を行う。 |
解く
(1)エンジン回転速度や負荷の変化があっても噴射圧力が変動しないように,コモン・レール内の燃料圧力を常時一定に保つように制御している。 不適切 コモン・レール圧力制御 アクセル開度とエンジン回転速度をもとに目標噴射圧を算出し,レール圧センサの検出値が目標値になるように,サプライ・ポンプのサクション・コントロール・バルブに信号を送り,サプライ・ポンプからコモン・レールへの燃料圧送量を制御する。コモン・レール内の燃圧は,アイドリング時で約 40 MPa に調整され,基本的にエンジンの負荷や回転速度が高くなる程,目標噴射圧も高くするようになっている。
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(2)クランク角センサ及び気筒判別センサからの信号で気筒判別を行い,気筒ごとに圧縮行程から膨張行程での間にパイロット噴射とメイン噴射の噴射信号を出している。 適切 クランク角センサ及び気筒判別センサ クランク角センサは,エンジン回転速度を検出しているセンサであり、外周に 34 枚の信号歯を設けたクランク角センサ・プレートが,クランクシャフトと一体ごとで回転することにより, 10°毎のクランク回転信号を出力する。また,プレートには信号歯が 2 枚分欠けた所が設けられており,この部分の信号によりエンジン ECU は正確な上死点( 1 番, 4 番気筒)を検出している。 また,気筒判別センサは,クランク角センサと同様の電磁ピックアップを用いて信号を発生させており,ポンプ・ドライブ・シャフト・プーリの外周に回転角が 90°毎の信号歯が 4 枚設けられ,更に 1 枚余分に歯を設けている。 エンジン ECU は,このセンサからの気筒判別信号と,クランク回転信号から気筒判別を行っている。
パイ口ット噴射制御 補助的な噴射であるパイロット噴射は,圧縮行程の早い段階で噴射される。このとき噴射した燃料は,自己着火しないで燃焼室内に拡散し,空気と混ざった予混合状態にして,冷炎反応状態(燃焼し易い状態)のまま保持される。この状態からピストンが上死点を過ぎ,シリンダ内の温度が下がり始めた所でメイン噴射が行われるため,このとき噴射された燃料もすぐには自己着火せず,拡散して予混合状態となってから,冷炎反応状態のパイロット燃料の作用を受け急速に燃焼する。このような燃料噴射制御を行うことにより,噴射した燃料と空気とを十分混合させてから燃焼させることができるため黒煙が低減できる。また,メインの燃焼の開始を緩やかにすることで,最高燃焼温度が低下することにより N0x の排出も低減できる。ただし,ある程度エンジンの回転速度が上昇するとパイロット噴射を止め,通常の噴射方式に切り替えている。 なお,パイロット及びメインの噴射量は,各々についてエンジンの状態から算出し,各種センサによる補正を加え決定した後,レール圧に応じてインジェクタへの通電時間を制御している。また,メインの噴射時期及びパイロット噴射とメイン噴射の間隔についても同様の方法で決定している。
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(3)各センサからの信号をもとに最適な噴射量及び噴射時期を計算し,EDU(エレクトロニック・ドライビング・ユニット)を介してインジェクタヘの通電時間及び通電時期を制御している。 適切 |
燃料噴射制御 コモン・レール式高圧燃料噴射システムでは,各センサからの信号をもとに,エンジン ECU が必要な計算を行い, EDU を介して,インジェクタの電磁制御弁に信号を送り,インジェクタへの通電時間及び通電時期を制御することにより,最適な噴射量及び噴射時期にしている。コモン・レール式高圧燃料噴射システムには,エンジンの運転状態に応じて噴射圧力を制御したり,噴射を 2 段階に分けるなどコモン・レール式高圧燃料噴射システム特有の制御があるため,ここではそれらの内容について説明する。 |
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(4)吸入空気温度が低いとき及び冷却水温が低いときには噴射量の増量補正を行う。 |
適切
吸気温補正
吸入空気温度が低いときは,空気密度が高くなるため増量する。
よって答えは(1)