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電子制御式スロットル装置を用いた筒内噴射式ガソリン・エンジンに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)エンジン負荷に応じて燃焼方式を切り替えているため,同一吸入空気量で燃焼方式を切り替えると,発生トルクに差が生じる。 |
(2)電子制御式スロットル装置は,アクセル・ペダルの動きをセンサで検出し,その出力をべ一スにエンジンECUがスロットル・バルブの開度が最適となるようにスロットル・モータの駆動を制御するものである。 |
(3)空気過剰状態でも燃焼が可能であるため,低負荷運転領域ではポンプ損失が増大するので,ジーゼル・エンジン並みの熱効率は得られない。 |
(4)アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系統になっており,一系統が故障したときでも走行が可能となる構造になっている。 |
解く
(1)エンジン負荷に応じて燃焼方式を切り替えているため,同一吸入空気量で燃焼方式を切り替えると,発生トルクに差が生じる。 |
(2)電子制御式スロットル装置は,アクセル・ペダルの動きをセンサで検出し,その出力をべ一スにエンジンECUがスロットル・バルブの開度が最適となるようにスロットル・モータの駆動を制御するものである。 |
(3)空気過剰状態でも燃焼が可能であるため,低負荷運転領域ではポンプ損失が増大するので,ジーゼル・エンジン並みの熱効率は得られない。 不適切 低負荷域でも吸入空気量をあまり絞らない状態で運転が可能となる。したがって,ポンプ損失が低減される |
(4)アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系統になっており,一系統が故障したときでも走行が可能となる構造になっている。 |
よって答えは(3)
電子制御式ス口ットル装置
筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,エンジン負荷に応じて燃焼方式を切り替えている。そのため,同一吸入空気量で燃焼方式を切り替えると,発生トルクに差が生じてスムーズな切り替えができない。また,従来のアクセル・ペダル連動式のスロットル・バルブでは,アクセル開度とバルブ開度の関係が固定されているため,燃焼方式切り替え時には,図 のように大容量のバイパス回路が必要となる。
そこで,多くの筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,アクセル・ペダルの踏み込み量に応じて,適切なエンジン・トルクを得られるように,図のような電子制御式スロットル装置を採用している。
これは,アクセル・ペダルの動きをセンサで検出し,その出力をべースにエンジン・エレクトロニック・コントロール・ユニット(以下,エンジン ECU という。)がスロットル・エレクトロニック・コントロール・ユニット(以下,スロットル ECU という。 ) を介してモータを駆動し,スロットル・バルブを最適な開度となるように制御するもので,エンジン負荷に応じた各燃焼方式で必要とされる空気量を,運転者に違和感を与えることなく供給するようになっている。
また,万一の故障時にも対応できるように,アクセル及びスロットルの各センサ信号は二重系にすると共に,異常を検出したときには,退避走行が可能となる程度に吸入空気の流量を制御している。
筒内噴射式ガソリン・エンジンにおける燃焼
筒内噴射式ガソリン・エンジンでは,低負荷運転領域の場合,成層燃焼を行うため,着火可能な混合気の層を,スパーク・プラグ付近に作り出し,それ以外の部分には空気が充てんされており,燃焼室全体でみると,超希薄な空燃比でも,安定した燃焼を行うことができる。このことが筒内噴射式エンジンの大きな目的の一つである。
これにより,空気過剰状態でも燃焼が可能となるので,低負荷域でも吸入空気量をあまり絞らない状態で運転が可能となる。したがって,ポンプ損失が低減されるため,ジーゼル・エンジン並の熱効率が可能となる。この考え方は,古くから知られ研究されてきたが,その多くはスパーク・プラグ付近に燃料を噴射して,燃料が拡散する前に点火する方式であった。しかし,この方式では,燃料の気化が十分にできないため,スパーク・プラグに液体の燃料が付着し,また,周辺の混合気が濃過ぎるため,プラグがくすぶるなどの問題が生じて,実用化には至らなかった。
したがって,近年実用化された筒内噴射式エンジンでは,燃焼室内の気流制御と圧縮行程での燃料噴射制御により,点火直前にピストンに向かって噴射した燃料を筒内の空気流動に乗せ,気化させながらスパーク・プラグ点火部に運ぶことで成層燃焼が行われている。
高負荷運転領域の場合は,インテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジンと同様に,図( 2 )のように均質燃焼を行うが,直接,シリンダ内に燃料を噴射するため,燃料の気化潜熱(潜熱とは、固定、液体、気体と変化するときに吸収・放出する熱エネルギーのこと)により燃焼室内の空気温度を下げて空気密度を上げるので,インテーク・ポート噴射式ガソリン・エンジン以上の高出力が得られる。
なお,成層燃焼と均質燃焼の中間域では,均質リーン燃焼(インテーク・ポート噴射エンジンでの希薄燃焼相当)を行い,燃費向上と燃焼切り替え時のトルク変化をスムーズにしている。