10改
図に示すイグナイタ等で用いる出力回路駆動アクチュエータの点検結果に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。ただし,故障推定原因は単独故障とする。なお,図に示すV1からV3は表のとおりである。
(1)装置の電源がON時に,V1及びⅤ2に5V以上の電圧が発生していない場合は,駆動アンプの駆動端子を外し,V2に5V以上の電圧が発生することを確認する。このとき,V2に電圧が発生しなければ,エンジンECUに異常が発生している可能性がある。
(2)クランキング時,V1が変化しなければ,駆動信号が出力回路から出力されていない可能性がある。
(3)装置の電源がON時に,Ⅴ3に電源電圧が発生しない場合は,駆動アンプの駆動端子を外し,V3に電圧が発生することを確認する。このとき,電源電圧が発生していなければ,一次コイル側に異常が発生している可能性がある。
(4)クランキング時のV3の電圧点検については,インパルス波形の電圧であるため,サーキット・テスタでの真値測定は不可能で,オシロスコープで測定しなければならないが、ピーク・ボルテージ測定機能をもっているマルチ・テスタ(サーキット・テスタ)では,ある程度の判断は可能
解く
(1)装置の電源がON時に,V1及びⅤ2に5Vの電圧が発生していない場合は,駆動アンプの駆動端子を外し,V2に5Vの電圧が発生することを確認する。このとき,V2に電圧が発生しなければ,エンジンECUに異常が発生している可能性がある。
不適切
(2)クランキング時,V1が変化しなければ,駆動信号が出力回路から出力されていない可能性がある。
適切
(3)装置の電源がON時に,Ⅴ3に電源電圧が発生しない場合は,駆動アンプの駆動端子を外し,V3に電圧が発生することを確認する。このとき,電源電圧が発生していなければ,一次コイル側に異常が発生している可能性がある。
適切
(4)クランキング時のV3の電圧点検については,インパルス波形の電圧であるため,サーキット・テスタでの真値測定は不可能で,オシロスコープで測定しなければならないが、ピーク・ボルテージ測定機能をもっているマルチ・テスタ(サーキット・テスタ)では,ある程度の判断は可能
適切
よって答えは(1)
イグニション・コイル(マイナス駆動回路)
図に示すイグニション・コイルは,マイナス駆動回路を用いたのもので,コイル駆動部とコイルを組み合わせたものが用いられ,更にハイテンション・コードのないダイレクト・コイルと称するコイル駆動部をスパーク・プラグごとに直付けする機構を設けたものも用いられている。
(a)回路構成
駆動回路の構成は,図のようにECUの出力回路からの信号電圧によりイグナイタ(以下,駆動アンプという。)の入力回路・駆動回路が働き,TrがON状態になると,外部12V電源⇒イグニション・コイル⇒イグナイタの駆動回路のTr⇒イグナイタ内のアース⇒ボデー・アースに電流を引き込む回路が構成され,イグナイタが駆動する。
(b)信号形態
図は,ECUの信号端子又はイグナイタ信号端子とボデー・アース間に発生する出力回路からの信号電圧である。
Low電圧レベル(ボデー・アース電圧)が一次コイルへの通電時間に当たり,通電が完了してHighの電圧レベル(安定化電源電圧)に戻る瞬間に一次コイルの駆動が停止される。
図は,イグナイタの一次コイルの駆動端子とボデー・アース間に発生する一次コイルの駆動信号電圧である。
駆動回路のTrがOFFのときは,12Vが掛かり,TrがONされると,一次コイル駆動信号電圧がLow電圧レベルに落ちる。このとき,コイルは駆動状態に入り,一次コイルの自己誘導作用により誘導電圧波形がマイナス側に発生し,駆動が終われば駆動信号電圧は,再び電源電圧付近に戻る。
駆動回路のTrがOFFされると,一次コイルの駆動信号電流が遮断されるため,一次コイルには自己誘導作用により数百ボルトの電圧が発生し,二次コイルには相互誘導作用により,更に高い電圧が発生する。
一次コイルの駆動信号波形は,二次コイルに発生する高電圧波形と類似点が多いので,この波形をもとに二次コイルの高電圧を推定すると,二次コイルに発生した高電圧は,スパーク・プラグのすき間であるエア・クリアランスを超える放電電圧(以下,空電破壊電圧という。)まで上昇し,空電破壊が発生し始めると,電極からのメイン・スパークが始まり,メイン・スパークの完了後に,スパーク・ライン(誘導放電)を持続しながら,コイル内の残留電流消弧の波形が現れ,電流消弧波形がなくなった時点で,作用が完了する。