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筒内噴射式ガソリン・エンジンの燃料噴射制御に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
(1)低負荷時は,成層燃焼を行うため,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下で燃料を噴射し,ピストンの下降に伴う空気流動によりシリンダ内に均等に拡散するようになっている。 |
(2)中負荷時は,均質リーン燃焼を行うため,圧縮行程後期の高圧雰囲気下で,高圧スワール・インジェクタより燃料を噴射する。 |
(3)高負荷時は,均質燃焼を行うため,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下で燃料を噴射し,燃料の気化熱を吸入空気の冷却に利用して体積効率を上げ,理論空燃費近くで燃焼させ高出力を得ている。 |
(4)冷間始動時に触媒の温度を上昇させるために,圧縮行程で超リッチ燃焼を行い,残った空気と燃焼後の高熱を用いて再燃焼させ,触媒の早期活性化を行っている。 |
解く
(1)低負荷時は,成層燃焼を行うため,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下で燃料を噴射し,ピストンの下降に伴う空気流動によりシリンダ内に均等に拡散するようになっている。 不適切 |
低負荷時には,成層燃焼を行うために,圧縮行程後期の高圧雰囲気下で,高圧スワール・インジェクタより燃料を噴射する。噴射された燃料は,コンパクトな球状噴霧を形成し,シリンダ内の気流制御との相乗効果で,図 のようにシリンダ内に拡散することなくスパーク・プラグ近傍に導かれ,成層燃焼(空燃比: 25 ~ 55 程度)を行う。
(2)中負荷時は,均質リーン燃焼を行うため,圧縮行程後期の高圧雰囲気下で,高圧スワール・インジェクタより燃料を噴射する。
不適切
中負荷時(均質リーン燃焼)
中負荷時は,成層燃焼と均質燃焼との切り替え時のトルク変化をスムーズにするため,均質リーン燃焼を行う。この燃焼時には,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下で,図 のように燃料をシリンダ内に噴射しており,噴射された燃料は,中空のコーン形状に広がると共にピストンの下降に伴う空気流動によりシリンダ内に均等に拡散するようになっている。
その後,タンブル流やスワール流などによってできた大きな流れが,圧縮行程の末期に細かい乱れに変わることにより燃焼速度が速くなる。そのため,燃焼が改善されて,均質リーン燃焼(空燃比: 15 ~23程度)を行うことが可能となる。
(3)高負荷時は,均質燃焼を行うため,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下で燃料を噴射し,燃料の気化熱を吸入空気の冷却に利用して体積効率を上げ,理論空燃費近くで燃焼させ高出力を得ている。 適切 |
高負荷時(均質燃焼) 高負荷時には,中負荷時と同様に,吸入行程前期の大気圧以下の雰囲気下に燃料を噴射し,燃料の気化熱を吸入空気の冷却に利用して体積効率を上げ,理論空燃比近く(空燃比: 12 ~ 15 程度)で均質燃焼を行い,高出力を得ている。
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(4)冷間始動時に触媒の温度を上昇させるために,圧縮行程で超リッチ燃焼を行い,残った空気と燃焼後の高熱を用いて再燃焼させ,触媒の早期活性化を行っている。 |
不適切
触媒早期活性化制御
冷間始動時に触媒の温度を上昇させるために,始動直後の短時間,燃料噴射を圧縮行程と燃焼(膨張)行程で 2 回に分けて噴射している。
圧縮行程で超リーン燃焼を行い,燃焼(膨張)行程で再度燃料を噴射し,残った空気と燃焼後の高熱を用いて再燃焼させ,排気ガスを昇温させることにより,短時間で触媒の温度を上げ,触媒の早期活性化を行っている。
よって答えは(3)