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サスペンションに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)ショック・アブソーバは,オイルが狭い通路を通過する時の流路抵抗で減衰力を発生しているが,ピストンの作動速度に比例するものや作動速度に対して2段特性になっているものがある。 |
(2)非線形コイル・スプリングは,軽荷重ではばね定数が小さく,大きい荷重ではばね定数が大きくなる。 |
(3)サスペンション・アームのブッシュは,乗り心地と走行安定性を両立させるために,すぐりや内筒・外筒の間に金具を入れた構造のものがある。 |
(4)ショック・アブソーバ上部に用いられるアッパ・サポート・ゴムは,常用時には圧縮ひずみとして作用し,入力荷重が大きくなるとせん断ひずみとして作用する構造のものが多い。 |
解く
(1)ショック・アブソーバは,オイルが狭い通路を通過する時の流路抵抗で減衰力を発生しているが,ピストンの作動速度に比例するものや作動速度に対して2段特性になっているものがある。 |
(2)非線形コイル・スプリングは,軽荷重ではばね定数が小さく,大きい荷重ではばね定数が大きくなる。 |
(3)サスペンション・アームのブッシュは,乗り心地と走行安定性を両立させるために,すぐりや内筒・外筒の間に金具を入れた構造のものがある。 |
(4)ショック・アブソーバ上部に用いられるアッパ・サポート・ゴムは,常用時には圧縮ひずみとして作用し,入力荷重が大きくなるとせん断ひずみとして作用する構造のものが多い。 |
よって答えは(4)
サスペンション
(イ)サスペンションの振動・騒音
サスペンションの振動・騒音では,乗り心地と密接に関連し,ハーシュネス(注参照)が特に関係の深い現象で,乗員が敏感に感じることが多い。このため,スプリングのばね定数や,ブシュ類を柔らかくするなどの対応がなされているが,反面,乗り心地を重視し過ぎると,足回りの剛性が低下し,操縦安定性に悪影響を及ぼすことがある。この相反する要件を融合させるために,図のようにサスペンションに関連する構成部品で様々な工夫が施されている。
(注)ハーシュネスとは,路面の段差,継ぎ目走行時にタイヤに加えられた衝撃力がサスペンションを通して衝撃音や振動として伝わる現
象をいう。
(ロ)サスペンションでの対応
( a ) スプリング
スプリングのばね定数とは,ばねのたわみ量に対する荷重の増加率をいう。自動車のスプリングが柔らかい(ばね定数小)と乗り心地はよいが,走行安定性が悪く,硬い(ばね定数大)と走行安定性はよいが,乗り心地は悪い。そこで,図右のようにばね定数がたわみ量によって変化する非線形スプリングが用いられれることが多い。通常の使用範囲では,ばね定数を柔らかく設定して,乗り心地を優先させ,ある程度の荷重が加わると,ばね定数が高くなり,走行安定性を優先させる。また,図左のようにコイル・スプリングの中心軸を,ショック・アブソーバの中心軸より傾け,ショック・アブソーバ内のピストンやロッドに加わる横力を低減し,摺しゅう動抵抗の低減,乗り心地の向上を図ったオフセット・コイル・スプリングを用いているものもある。
( b ) ショック・アブソーバ
ショック・アブソーバには,アブソーバ・オイルが封入され,このオイルが狭い通路(バルブ,オリフィス)を通過するときの流路抵抗で,減衰
力が発生する。減衰力は,この通路の形状(通路面積,バルブ・スプリングの強さ)と作動速度にほぼ比例する。ショック・アブソーバの減衰力は,図(1)のようにピストンの作動速度に比例するもの,作動速度に対して2段特性になっているものや,図(2)のように走行パターンによって,減衰特性が変化するものがある。
(c)ゴム・ブシュ
① アッパ・サポート・ゴム
アッパ・サポート・ゴムのばね定数と減衰特性は,乗り心地に大きく影響し,耐久性の許す限り,柔らかい(ばね定数小)ことが望ましいが,柔らか過ぎると,減衰力も低下し,走行安定性が悪くなる。このアッパ・サポート・ゴムには,サスペンションの突き上げ時に,大きな荷重を受けるので,常用荷重時には柔らかく,荷重が増すにつれて硬くなるようなものが用いられている。図(1)のような円錐形を横に切った形状のものは,軽荷重に対しては,図(2)ー①の軸方向のせん断ひずみとして作用し,荷重が増すに連れて図(2)ー②の圧縮ひずみとして作用することで軽荷重及び重荷重時に対応するようになっている。
② 入力荷重分離式のアッパ・サポート
乗り心地の向上,振動,騒音の低減のために,図のようにアッパ・サポートに掛かる各方向からの入力荷重を分離する支持構造をとっているものがある。図の A のショック・アブソーバのピストン・ロッドからの細かい振動強制力(ばね定数小)はアッパ・サポート・ゴムへ,図のB のコイル・スプリングからの大きな上下の振動強制力(ばね定数大)は,スプリング・シート部のインシュレータで吸収している。また,図の C のバウンド・ストッパからの大きな強制振動力はバウンド・ストッパで吸収してからアッパ・サポート・ゴムへと,それぞれに分離している。
③ インタリング付きブシュ
図のようにロワー・アームやアッパ・アームのブシュの外筒と内筒の間に,メタル・インタリング(中間金具)を入れて,軸直角方向に硬く,軸方向とねじり方向に柔らかいばね定数としたものである。横力によるコンプライアンス・ステア(注参照)を小さくし,前後力によるコンプライアンス・ステアを大きくすることで,バウンド及びリバウンド時,ブシュをねじれやすくして,乗り心地と走行安定性の両立を図っている。
(注)コンプライアンス・ステアとは,路面等からの衝撃をサスペンションのラバー・ブシュを変形させることで,走行安定性を保つ操舵
システム。
④ すぐり入りブシュ
サスペンション・アームのボデー側取り付け部のブシュに,図のように車両前後方向の“すぐり”を入れ,前後方向には柔らかく,上下方向には硬いばね定数として,効果としては,前述したインタリング付きのものと同様に乗り心地と走行安定性の両立を図っている。