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ホイール・アライメントに関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。
(1)スラスト角(後輪偏向角度)とは,車両の中心線(幾何学中心線)とスラスト・ラインの角度のことをいう。
(2)ボール・ナット型ステアリング装置では,直進走行時のステアリング・ホイールのセンタ位置に狂いが生じるが,左右の切れ角はストッパで調整することができるため,左右のタイロッド長が異なっても切れ角への影響はあまりない。
(3)ホイールのリヤ側にタイロッドがある車両が旋回するとき,バウンド時(スプリング圧縮時)にはトーイン側へ,リバウンド時(スプリング伸長時)にはトーアウト側へとトーが変化する。
(4)トーイン及びマイナス・キャンバを設けることにより,両スラストカが打ち消しあうので,イン方向のサイド・スリップ量(横滑り量)を小さくすることができる。
解く
(1)スラスト角(後輪偏向角度)とは,車両の中心線(幾何学中心線)とスラスト・ラインの角度のことをいう。
適切
スラスト角と後輪のトーの関係
自動車か直進する場合、直進方向を決定する要因は前後輪のトーである。特に後輪のトーは直進性において重要で、この後輸のトーか正しいと図の中心線(幾何学中心線)に対し、左右のわだちが平行かつ等距離で、ステアリング・ホイールもセンタ位置となり、理想的なホイール・アライメントとなる。
しかし、後輪にねじれやアライメントに変化が生じて後輪のトーに不具合が発生すると、極端な場合には図のような状態で走行することになり、操縦安定性上好ましくない。
このときの中心線(幾何学中心線)とスラスト・ラインの角度をスラスト角(後輪偏向角度)というなお、これらの測定は、4輪アライメント・テスタで行う。
(2)ボール・ナット型ステアリング装置では,直進走行時のステアリング・ホイールのセンタ位置に狂いが生じるが,左右の切れ角はストッパで調整することができるため,左右のタイロッド長が異なっても切れ角への影響はあまりない。
適切
ボール・ナット型ステアリング装置では、ラック・ピニオン型ステアリング装置と同様に図のように直進走行時のステアリング・ホイールのセンタ位置に狂いが生じるが、左右の切れ角はストッパで調整することができるため、左右のタイロッド長が異なっても切れ角への影響はあまりない。
(3)ホイールのリヤ側にタイロッドがある車両が旋回するとき,バウンド時(スプリング圧縮時)にはトーイン側へ,リバウンド時(スプリング伸長時)にはトーアウト側へとトーが変化する。
適切
旋回時のト一変化
車両が旋回するときは、ローリングして旋回内側のサスペンションが浮き上がり外側のサスペンションが沈み込む。その際に、キング・ピン傾角かあるとサスペンション・アームとタイロッドの角度が変化する。
この状態でホイールが上下運動すると、図のようにホイール中心の内外方向への移動量とタイロッドの内外方向の移動量に差が生じる。このため、ホイールのリヤ側にタイロッドがある車両ではバウンド時(スプリング圧縮時)にはトーイン側へ、リバウンド時(スプリング伸長時)にはトーアウト側へとトーが大きく変化する。
このような車体のロールによるト一変化をロールステアという。
(4)トーイン及びマイナス・キャンバを設けることにより,両スラストカが打ち消しあうので,イン方向のサイド・スリップ量(横滑り量)を小さくすることができる。
不適切
トーインとサイド・スリップ量
トーインを設けるとタイヤには、図(1)のように内向きのスラストカが発生する。また、プラス・キャンバを設けると前述したように外向きのスラストカ(キャンパ・スラスト)が発生する。このため、両スラストカが打ち消しあうので、サイド・スリップ量(横滑り量)を小さくすることができる。
なお、図(2)のようにマイナス・キャンバの車両では、内向きのスラストカ(キャンパ・スラスト)が発生するので、同方向のスラストカが合わさり、より大きなスラストカとなるため、大きなイン方向のサイド・スリップが発生する。そのため、あまり大きなトーインを設けると走行抵抗の増加やタイヤの編摩耗の原因となる。
よって答えは(4)