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平成19年3月実施1級小型問題3:エンジン電子制御装置の電源回路の点検

3

図に示すエンジン電子制御装置の電源回路の点検に関する記述として,不適切なものは次のうちどれか。

(1)クランキング時,スタータ・モータの回転速度が適正であり,電源端子電圧V1は9V以上あること。

(2)安定化電源端子電圧V2は,イグニション・スイッチON時とクランキング時に12Vで安定していること。

(3)アース端子電圧V3は,バッテリの負荷に関係なく電圧が発生しないこと。

(4)安定化電源端子電圧V2が不安定になる原因は,バッテリからの電力供給量の不足,エンジンECU内の安定化電源回路の異常などがある。

 

解く

(1)クランキング時,スタータ・モータの回転速度が適正であり,電源端子電圧V1は9V以上あること。

適切

(2)安定化電源端子電圧V2は,イグニション・スイッチON時とクランキング時に12Vで安定していること。

不適切

5±0.25

 

(3)アース端子電圧V3は,バッテリの負荷に関係なく電圧が発生しないこと。

適切

(4)安定化電源端子電圧V2が不安定になる原因は,バッテリからの電力供給量の不足,エンジンECU内の安定化電源回路の異常などがある。

適切

 

よって答えは2

 

参考

(1)電源系統の点検

電源系統(ここでは12V電源を例にする。)の点検は,次に挙げる各条件について,図のV1~V6の電圧測定を行い,規定値(12V以上,電圧なし,クランキング時9V以上)にあることを点検する。

 

(イ)バッテリの無負荷時及び負荷時(エンジン停止状態で灯火類などの一部負荷を作動)の電圧が規定値の範囲にあり,この測定値がバックアップ端子,ECU及びアクチュエータの電源端子にそれぞれ発生していること。

①イグニション・スイッチをOFFにして無負荷時のV1が12V以上であること。V1と同じ測定値がV2に発生(電圧値が変動しないこと。)していること。

②イグニション・スイッチをONにして負荷時のV1が12V以上であること。V1と同じ測定値がそれぞれV2,V3,V4に発生(電圧値が変動しないこと。)していること。

③上記①と②の点検において,無負荷時のV1及び負荷時のV1に著しい電圧差がないこと。

(ロ)すべてのアース端子に電圧が発生しないこと。

①イグニション・スイッチがOFF及びONいずれの場合も,V5,V6には電圧が発生しないこと。

(ハ)12V電源がクランキング時の負荷に適切に対応している

①クランキング時にV1が9V以上であること。

オシロスコープでクランキング時の経過的なV1電圧を確認し,常にV1に9V以上の電圧値が確保されていること。

・上記の電源系統の点検を行った結果,規定値から外れる場合は,バッテリの劣化のほか,配線の導体抵抗,接続部の接触抵抗などの不具合により,その回路を流れる電流量に応じた電圧降下で電力の損失が発生し,ECU,アクチュエータへの電力供給量が不足することが推測できるので,不具合箇所の整備が必要となる。

 

(2)電源回路の点検

電源系統の点検において,規定値から外れる電圧差が発生していると予測される回路上の接続部及び配線間を確認すること。

回路の点検は,次に挙げる測定条件下で,図のV1~V7の電圧測定を行う。

 測定条件:エンジン停止状態,イグニション・スイッチON時において,ECUのアース端子からボデー間に流れる電流には,電源に直接接続されている他  のセンサ及びアクチュエータなどの電流も流れているため,該当するセンサ及びアクチュエータなどが作動している条件下で測定すること。

 

①回路接続部V1,V3に測定条件の電流が流れる状態で,それぞれV1,V3に電圧が発生していないこと。

V1に電圧の発生があれば,ヒュージプル・リンクの異常(断線,接触抵抗などの増大)が推測でき,

V3に電圧の発生があれば,スイッチの異常(断線,接触抵抗などの増大)が推測できる。

 

②回路接続部以外の配線間に測定条件の最大電流が流れる状態で,それぞれV2,V4,V5に電圧が発生していないこと。

電圧の発生があれば,その電圧計の測定端子間の配線の異常(断線,接触抵抗などの増大)が推測される。

 

ECUのアース接続は,V6の線間電圧及びV7の接地電圧が発生していないことで,ECUのアース端子及びアース線,ボデー・アース・ターミナルの接続が適切であることを確認する。

 

(3)5V安定化電源の回路点検

5V安定化電源の点検は,イグニション・スイッチのON時と最大負荷時(クランキング状態で灯火類などの負荷を作動)にECU内5V安定化電源端子に発生する基準電圧(5V±0.25V)が一定で変動しないことを確認する。

回路点検は,次に挙げる測定条件下で,図のV1~V3の電圧測定を行う。

①イグニション・スイッチのON時にV1が基準値(5V±0.25V)にあること。5.25V超の電圧が発生しているときは,ECU内5V安定化電源回路の異常が推測できる。

②クランキング時にV3が12Vを下回った場合でも,V1が基準値(5V±0.25V)の範囲内で,かつ,電圧値が常に一定に保持されていること。

③クランキング時にV2V3に電圧差が発生し,V1が不安定な電圧になり,電圧変動幅も基準値(5V±0.25V)の範囲を外れている場合は,前述の「(2)電源回路の点検」により原因を推測し,12V電源の電圧変動幅が規定値の範囲に入っていればECUの点検を行う。

 

ECU内5V安定化電源が不安定になる場合は,12V電源からの電力供給量不足,又はECU内5V安定化電源回路の異常が推測できる。

・5V安定化電源回路系統に短絡が発生すると,V1には基準値(5V±0.25V)の電圧が発生しない。

この場合は,5V安定化電源の電源線端子をECUから切り離し,ECU側の5V安定化電源端子に基準値(5V±0.25V)の電圧が発生すれば,センサ及びセンサの電源線の異常が推測でき,逆にECU側に基準値(5V±0.25V)の電圧がなければECUの異常が推測できる。